飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

「っ、本当に知らない! あたしじゃない! 第一先生の車がどれとかも知らないし!」

「っあぁーもう、嘘ついてんじゃねぇ! ちくしょう、新車だっつーのに、修繕費高いんだぞ⁉ 保護者にも連絡させてもらうからな! いいから来い‼」

「だから、やってないってばぁ……!」


 車……?

 私は視線を廊下の窓の外に向けた。


 あるのは学校の裏門側。

 先生たちや関係者が停められる駐車場があり、その中にピカピカに黒光りした高そうな車がある。

 その車のボディには、赤色のクレヨンのようなもので『パワハラ教師』とか『バーカ』とか、先生への悪口が大きく書かれていて、木の枝か何かでこすったのか、切り傷もついている。

 なんて悪質で、子供じみたイタズラだろう。



「……違う」

 

 絶対入江さんじゃない。

 私はそう確信した。


 
「大人をなめると痛い目見るぞ! 来い! 入江!」



 入江さんが恐怖に顔を歪ませるのが見えた。