右手の痛みより、廊下の声の持ち主への心配が勝った私は咄嗟にハンカチで人差し指を押さえて、教室の外を覗き込んだ。


 私のクラスから二クラス分ほど離れた先の廊下に、生徒指導の壺井(つぼい)先生と、入江さんがいた。

 壺井先生が入江さんの腕を引っ張って連れて行こうとするのを、入江さんが必死に抵抗している。


「お前がやったのを見たってやつもいるんだ! どうせ服装検査のときのこと、根にもってたんだろう⁉ こんな陰湿なことして、ただで済むと思うなよ!」


 先生はこめかみに青筋を立てて、本当に怒ってるみたいで。

 大人の男の人が感情的に怒る姿はすごい迫力で、恐怖で身がすくんだ。

 入江さんも同じなのか、その顔はひどく青ざめている。