右手の人差し指が、ざっくりと切れている。

 それも結構しっかりと。


「っ、ひ、っ、」


 ドクドクと流れていく、血。

 サァー……と血の気が引いて、今まさに、女の子らしからぬ下品な悲鳴を上げようというときだった。

 
 
「だっから違うって言ってんじゃん、しつこいなぁ‼」



 ⁉



「しつこいのはお前だろう! そろそろ白状したらどうなんだ!」



 廊下から聞こえてきたヒステリックな声に、私は悲鳴を出し損ねた。


 廊下から聞こえる穏やかじゃない男女の声、どんどん痛みが増してくる右手の人差し指と流れゆく血、刻一刻と時を進める時計の針。


「っ、っ、???」


 私は、パニックになった。


 痛い、やばい痛い、えっ、誰がどうしたんだろう?

 あっ、痛い、血めっちゃ出てくる、わ、わ、血出たらどうしたらいいんだっけ……⁉


「ちょっ、痛い! 離して!」
 
「いいからこっちに来るんだ‼」


 !
 
 暴力⁉