飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

「……お疲れ」



 いつもと違って身体が冷たい(しん)のハグはやっぱり、あったかくて。

 ドキドキして、色んなものが浄化されるような感覚がして、全身の力が抜けた。


「っ……、」


 そしたら少しだけ、ほんの少しだけ、不意打ちで目から溢れた涙がタオルに滲んだ。


「……ありがとう……」


 また私の声はか細くなって震えてしまう。


「どういたしまして」
 

 優しい声の(しん)に背中をさすられながら、


 〝好きだ〟と思った。


 それは恋と呼ぶにはあまりにもおだやかで

 友情と呼ぶにはあまりにも(いびつ)

 この感情が世間で言う恋愛感情に当てはまるのか、よくわからなかった。


 それでもただ、この腕の中が好きだって

 この人が大切だって

 すごくすごく、思った。


 同時に、〝ずっとここにいて欲しい〟なんて、身勝手なことを考えてしまった自分に

 心の底から、失望した。