四月下旬。

専門学校二年目を迎えた俺(久峨 (あまね))は、早朝三時からの店(自宅がパン屋)の仕込み作業を終え、シャワーを浴びて、朝食を済ませた。

毎日朝二時半に起床し、仕込みをして、それから学校へと通うのは中学校に入学してからだから、既に八年目。
パン屋の仕事は朝早くて、早起きというスキルも既に備わってる俺の体は、さほど苦ではない。

強いて言うなら、今まではこの早朝の仕込みだけだった日常が、とある女と出会ったことで百八十度様変わりして。
早朝のみの作業が、学校から帰宅した後もするようになったという事。

以前は下校後に、横に女をはべらせて、毎日のようにとっかえひっかえして女遊びに明け暮れていたのに。
そのとある女に惚れて以来、キッパリと女遊びも卒業した。

そして、女に不自由してなかったこの俺が、その女のために毎日修行僧みたいに理性の限界と闘う日々を過ごしている。
だって、その女ってのが……。


「遅くなってごめん」
「いえ、わざわざ遠回りさせてすみません」

長い髪をポニーテールに纏め上げ、薄づきメイクなのに色気が駄々洩れで。

挙句の果てにはスキニーデニムにオーソドックスなブラウスのみというシンプル過ぎる服装なのに。
助手席に乗り込みシートベルトをした彼女を視界に捉えたら、見事に谷間にシートベルトがくい込んでる。

それも、結構な凹凸感。