「哲平さん」
「煽るな」
「………抱いてくれないんですか?」
「フッ、……抱いて欲しいのか?」
「だって、ドレス着るからキスマークも付けれないでしょ?」
「俺は付いてても構わないが、えなが嫌だろ」
「………別に、嫌じゃないですよ」
「嫌じゃないのか?写真に残るぞ」
「……それも、いい想い出になると思います」
寝起きだからなのか。
彼の盲毒に侵されているからなのか。
私の常識が彼の常識に似て来てしまったようだ。
翌日に挙式が控えているというのに。
少しくらい冒険したっていいかな?と思えてしまう。
だって、この先、まだ挙式が八回もあるのだというのだから……。
重なる唇を割って侵入している彼の舌に翻弄される。
啄む度に優しく添えられる彼の手のぬくもりと。
歯列をなぞるように蠢く舌先に酔いしれて……。
―――
――
―
数日ぶりの情事のあとは、心地いい抱擁で体の隅々まで幸せに浸れる。
彼は気を遣ってくれたようで、ドレスの布地に隠れそうな場所に薔薇を散らした。
「哲平さん」
「ん?」
ベッドに寝ている彼にキャリーケースから取り出した袋を差し出す。
「お誕生日おめでとうございます」
「……覚えてたのか?」
「もちろん。大したものではないですけど」
「ありがとう」
彼は嬉しそうに袋から取り出す。
「手編み?」
「はい」
「マジか。……いつ作ったんだ」
「ウフフッ、こつこつと」
「着け心地もいいな、これ」
「気に入って貰えてよかったです。それに、……じゃーん!」
「ん、……お揃い」
「はいっ」
「フフッ」
「んっ……っ……」
お揃いのマフラーを首に巻いたら、それを手繰り寄せた彼。
嬉しいのを見られたくなかったのか……。
唇に優しいキスが落とされた。



