「哲平さん、このドレスはレンタルですか?」
「いや、違うが、それがどうした?」
「今井さんにも見せてあげたいから、帰ったら着ようかと」
「フッ、写真でも十分だろうが、まぁ何度でも好きなだけ着ればいい」
「はいっ」
デコルテから背中にかけて施された刺繍が見事で、肩周りがオフショルダーになっていて、首から肩のラインが綺麗に出るデザイン。
数日前に散らされた薔薇が、微かに残ってる程度で。
彼が一昨日昨日と散らさなかった理由がこれなんだと理解した。
ミカドシルクは最高級のシルクで、上品な光沢に目が奪われる。
トレーンにも施された刺繍に、観光客の視線も釘付けになっているようだ。
記念写真を何枚も撮って、再びホテルへと戻った私達。
ドレスを脱ぎながら左手薬指に嵌る結婚指輪に目を奪われていた。
エンゲージリングに合うように誂えられた結婚指輪は、私の指には贅沢すぎるほどの輝きを放って――。
「えな様、こちらのお支度にお召し替え下さい」
「分かりました」
用意されている服は淡いブルーのアンサンブルのワンピース。
着替えないといけないのは分かってるんだけど、ドレスを脱ぐのが惜しくて、ついつい鏡に映る自分を見入っていると。
「夜の便に間に合わなくなりますので、お早めにお召し替えを」
「え?もう帰るんですか?」
「いえ、違います。次の目的地へと移動するためです」
「……移動」
挙式を兼ねて新婚旅行だと言っていたから、きっとそれだ。
スロベニアで過ごすのとばかり思っていたから、少しドキドキとしてしまう。
これって、ハネムーンだもんね?



