Special Edition ②


「えっ……ボートに乗るんですか?!」
「ん、これに乗らないと、あの島に辿り着かないぞ」
「……そうなんですね」

観光客を乗せる手漕ぎボート。
一応、貸し切り状態なんだけど、意外な展開にちょっと驚く。

ブレッド湖の真ん中に位置している島に降り立つと、観光客の視線を掻き集めるような私達。
教会へと向かう階段を彼は私を抱きかかえて上り始めた。

「哲平さんっ、自分の足で歩けますよ!」
「俺に任せとけ。新郎が新婦を抱きかかえて上るルールだから」
「えっ?!」

朝ご飯食べなければよかった。
少しでも軽くしとけばよかったと後悔してももう遅い。

「ダイエットしとけばよかったですね」
「フッ、えなくらい何てことない。もっと太って欲しいくらいだから」
「それでも……」
「ブツブツ言ってると、口塞ぐぞ」
「っ……、黙ってますっ」

アルプスの瞳と言われるブレッド湖に浮かぶバロック様式の教会。
愛の聖地と言われ、挙式したカップルは倖せになるという。

白い塔にオレンジ色の屋根。
湖に浮かび、木々に囲まれた幻想的な教会。
こじんまりとしていて、それほど大きくないけれど、厳粛な空気に包まれている。

御影家のスタッフと観光客に見守られながら、挙式が執り行われた。
そして――――。

祭壇の一歩手前にある紐を二人で引く。
すると、カランカランッと湖に反響するような美しい音色が響き渡った。

『願いが叶う』という鐘。
彼との永遠の愛を誓う音色は、生涯忘れることの出来ない澄んだ音色だ。