Special Edition ②


私達を乗せた車が緩やかに停止した。
そこは、ブレッド湖という湖の畔にあるホテルで、先回りして到着していた御影家のスタッフが出迎えてくれた。

白を基調とした客室は、童話に出て来そうなヨーロッパの昔ながらの雰囲気を漂わせながら、それでいて所々に現代的な洗練された家具も配置されている。

「素敵なお部屋ですね」
「少ししたら散歩でもするか?」
「はい」

ずっと飛行機に乗っていたから、大自然の空気を満喫したい。



食後に湖面に浮かぶ月を愛でながらホテル周辺を散策する。
少し風が冷たく感じるけれど、繋がっている手から彼のぬくもりを感じて。

「えな」
「はい」
「聞かないのか?」
「何をです?」
「何しに来たのか、いつまでの旅行なのかとか」
「聞きたいですけど、楽しみにしときます」
「フッ」
「その代わり」
「ん?」
「私だけを見てて下さいね?」
「愚問だ」

頬に添えられた手。
長い睫毛を纏った瞳に捕らわれて。
形の良い唇がそっと重なった。

**

翌朝、朝食を食べ終わると、女性スタッフ二人がかりでヘアメイクが施される。
みるみるうちに仕上げられた私は、鏡に映る自分が別人かと思うほどに見惚れてしまった。

「えな、準備が終わったか?」
「あ、はいっ」

鏡越しの彼は、黒いタキシード姿で、グレーのお洒落なベストを合わせ、艶々に磨かれた靴を履いて。
軽くアレンジされた髪を私の目の前のドレッサーの鏡で整えている。

「哲平さん、凄くカッコイイですっ」
「フッ」

少しはにかんだ表情も色気があって見惚れてしまう。

「行こうか」
「はいっ」