Special Edition ②




「美味しいっ!」
「アプフェルシュトュルーデルというウィーンのアップルパイです」
「甘さ控えめで美味しいです」

再び離陸したプライベートジェット。
スタッフさんが用意してくれたのは、恐らく彼がさっき空港で指示した洋菓子だと思う。
『ウィーンの』と言ってたから。

珈琲がテーブルに置かれ、スタッフが踵を返したのを見届け、彼の席へと。

「どうした?」

彼の膝の上にちょこんと座って、腕を首に巻き付けて。

「さっきはごめんなさいっ。アップルパイを手配して下さってありがとうございますっ」

彼が気分を害したのは言うまでも無くて。
多忙の中、旅行に連れ出してくれただけでも有難いのに、こんな風に尽くしてくれる事が何よりも嬉しくて。
この気持ちをすぐにちゃんと伝えないと後悔しそうだもの。

彼は次から次へと私を喜ばしてくれる。
だから、その時にちゃんと感謝の気持ちを伝えないと、どんどんと感謝の気持ちが貯金されてしまうから。

腰に回された手は、優しく私を包み込む。
痛みを帯びない事が何よりの証拠で。
彼が怒ってないというバロメーター。
だから、私は素直に彼に体を預けた。

**

到着したのはスロベニア共和国。
南ヨーロッパに位置していて、首都にあるリュブリャナ空港に降り立った私達は、手配されている車数台で北上した。

「今日はもう遅いから、ホテルに泊まるだけだから」
「……はい」

彼に任せておけば大丈夫。
初めて訪れた土地で右も左も分からないし。
何語なのかも分からないんだもん。
彼から離れたらきっと速攻で迷子になる。

隣りに座る彼の手を無意識にぎゅっと握っていた。