「えな」
「…んっ……ん」
甘く痺れるようなバリトンボイスの彼の声が聞こえて、微睡む瞼を開ける。
「もう着いたの?」
「いや」
「ん?」
「具合が悪いんじゃないんだよな?」
「……うん」
「ずっと寝てるから心配になるだろ」
「……ごめんなさい」
あまりに寝心地よくて3時間も寝ていたらしい。
テーブルにおやつらしきケーキが置かれていた。
「食べてばかりで太りそうね」
「えなはもっと太った方がいい」
「哲平さん、太った女性が好きなの?」
「いや」
「太れ太れって、ぶくぶくに太ったら『痩せろ』とか言うんじゃ?」
彼ならあり得る。
あーしろこーしろ言いそうだもの。
「フッ、えなは太れない体質だろ。体が華奢過ぎて、毎回抱くのが怖くなる。壊してしまいそうで」
「っ……、ちょっと、哲平さんっ!」
スタッフさんが近くにいるのに『抱く』とか口にしちゃダメなのに!
恥ずかしくなって思わず彼の口元を手で覆ったら。
「んッ?!!!」
舌でぺろりと舐められてしまった。
そして、肘掛け部分に腰を下ろした彼は、余裕の表情で唇を奪う。
御影家のスタッフが何人もいる機内で。
「少しは俺の相手しろ」
「っ……」
仕事をしてたのは哲平さんじゃないっ!
だから、邪魔しないように寝てたのに……。
再び落とされたキスはアルコールの味を感じさせ、誰かの視線があるかもしれないというスリル感も相まって。
左胸の鼓動がトクトクトクトクと物凄い速さで早鐘を打つ。
キスの雨が止んだかと思えば、私の紅茶を口に含んだ彼は、それを口移しで流し込んで来る。
自宅の部屋で同じことされても動揺するのに、一万フィートを超える上空でって。
悪酔いしそうよ……。



