機内に既に待機していたスタッフもいて、合計10人程度が帯同するらしい。
自己紹介されたけど、名前すら覚えられないほど緊張に襲われた。
このお姫様のような時間は、一体いつまで続くのだろう?
行き先も分からず、何日間なのかも分からないまま。
御影家のプライベートジェット機は優雅に羽田空港を飛び立った。
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ビジネスクラスのようなシート部分の衝立は無く、哲平さんのシートとの距離も意外と近くて。
私達の後ろのシート一列は空席で、その更に後方部分にスタッフがいる。
羽田空港を出発して一時間ほどが経った頃。
機内食とは思えないほどの豪華な食事が運ばれて来た。
「ワインにするか?」
「え?」
「好きなもの飲んでいいぞ」
「………」
スタッフが差し出したドリンクメニューには、シャンパンを始め、私が好きな赤ワイン書かれていて。
勿論、ソフトドリンクも。
至れり尽くせりで、ホテルのスイートが空を飛んでる感覚に陥る。
「到着するまであとどれくらいあるんですか?」
「10時間以上あると思うけど」
「じっ……10時間」
どこへ向かっているか分からないけれど、恐らくヨーロッパとか北米、南米……遠いのは確定だ。
「では、赤ワインを少しだけ戴きます」
「赤ワインですね。直ぐにお持ち致します」
こんな異次元すぎる状況は、酔ってなきゃ身が持たない。
緊張しすぎて、どうにかなりそうだもの。
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食事とワインも戴いて、視線を横に向けると。
彼はパソコンに向かって仕事をしているようだ。
激務の仕事を放り出して旅行してくれるのだから、邪魔は出来ない。
私は歯磨きをして、休むことにした。



