「失礼します。……えな様、お紅茶はこちらに置かせて頂きます」
「ありがとうございますっ」
「捗られてますか?」
「ん~、何とか」
今井さんが用意してくれた藤籠の中を彼女は確認し始めた。
「あら、もう出来上がってるではありませんかっ」
「マフラーはね。まだスヌードの方が残ってて」
「マフラーだけでも十分だと思いますが。それにこの編目のデザイン、かなり凝ってますし、配色も素敵ですよ」
「そう言って頂けると安心出来ます。哲平さん、お洒落な着こなしするから、合わせるのが大変で」
「お気持ちが何より大事でございますよ」
「この毛糸も、手触りがよくて助かります」
「いえいえ、私共はこんなことくらいしか出来ませんから」
今井さんが用意してくれた毛糸は、高級品だと直ぐに分かる。
肌に当ててもチクチクしないし、編んでてもごわつき感が全くない。
マフラーはスーツにも普段着にも合わせれるように、シックな色目のダークグレーに少しアクセントの落ち着いた青色を足して。
アラン柄が基本で、両端部分がゴム編み。
それに対になるように、私のは同じグレーにオレンジ色をアクセントに入れた。
そして、今編んでる彼のスヌードは黒みがかった萌葱色。
そして、既に編み終わってる私のスヌードは蘇芳色。
どちらも落ち着いた色目で冬のコーディネートに合わせやすいように。
数年ぶりにする編み物だから、何度も失敗して。
父が生きていた時は、よく作ってあげていた。
だから、編み物自体は得意なんだけど。
好きな人に編んだことがなくて、編目一つ一つにも気を遣う。
喜んでくれたらいいんだけど……。



