Special Edition ②


半年後。

「栞那、ちょっとこれこれ着けてみて!」
「えっ、……また?」
「そう嫌な顔するなよ」

お腹の子は無事にすくすくと育ち、もうじき八ヶ月を迎えようとしている。
だいぶせり出して来たお腹を労わるようにゆっくりとした足取りでキッチンからリビングへと移動しようとしていると、いつものように紙袋を手にして帰宅した旦那様。
その中身は試作品だらけ。

もちろん、私向けではない物もあるんだけれど、ここ最近はベビー服やマタニティの物ばかり。
自社縫製工場を持っているだけあって、仕事が早い。

半年前に旅行で訪れた先で、思いがけないサプライズを手にした私たち。
家族の縁に恵まれなかった彼に、新しい家族をつくってあげれる幸せを噛みしめた、あの日以来、デザイナー魂に火が付いたのか。
次々とデザインが思い浮かぶようだ。

結婚して二年ちょっと。
下着姿を見られることに慣れたとは言え、さすがに妊婦姿は恥ずかしくて。
もう女性として見て貰えなくなってしまいそうで、不安になる。

半ば強制的にマタニティランジェリーを身に着けさせられ、ソファに座る彼の前に立たされる。

「もういい?」
「まだ」
「えぇ~っ」

凝視する彼の視線から逃れるように顔を背けた、次の瞬間。
指先が優しく掴まれた。

「お腹の子、絶対男の子だ」
「へ?」
「栞那を独り占めしたい欲求が日に日に増す」
「っ……」
「そろそろ名前を考えようか」
「……そうだね」

お楽しみは後に取っておこうということになっていて、性別はあえて聞かないでいる。
だから、出産準備品は抽象的な白と黄色に統一しているけれど…。