Special Edition ②


母子手帳を貰うための書類を貰い、会計を済ませ、俺らは旅館へと戻った。
道中、終始無言の栞那。
思いがけないことで、プチパニック状態に陥っている。

「栞那、少し横になるか?」
「……ううん、大丈夫」

ぎこちない笑顔を浮かべ、内庭の縁台に腰を下ろした。
そんな彼女の隣りに座って…。

「私、考えが甘かったのかも。結婚してるんだから当然のことだし、いつかは…って思ってたけど、ちゃんと親になる心構えができてなかった」
「俺もだよ。酒を勧めたのは俺だし、二人でいることが幸せすぎて、失念してた」
「いっくんの大事な家族なのに、障害が出たりしたら私のせいだね」
「……だから、そういう風に悩む方がお腹の子に悪影響だってあの先生も言ってただろ」
「でも……だって…」
「俺は栞那との子なら、例え障害がある子であっても愛おしいし、愛せる自信あるけどな」
「っ…」
「だから、もう悩むな。ちゃんと育てることだけ考えよ?……な?」
「……うん」

つわりの初期症状なのか。
ウトウトとしている栞那を膝枕し、三井にメールを入れる。
栞那が妊娠したことを踏まえた上で、よさそうな産婦人科をピックアップしといてくれ、と。



「栞那……?」
「おかえり~」
「何してるんだ?」
「何って、妊娠週別の母子の変化と注意すべき点や、必要な対策とか纏めてるんだけど」
「……呆れた」

果物が食べたいと言うから、近くのスーパーにカットフルーツを買いに出ている間に、栞那はじっとしてられなかったのだろう。
パソコンが好きなのは知ってるけれど、つわりがある中でもいきいきと情報を纏めてる姿に呆気に取られてしまった。