Special Edition ②

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世界文化遺産を堪能し、予約している旅館へと到着した。

「夕食前に風呂に入っとくか」
「そうだね」
「部屋の露天?…それとも、大浴場?」
「部屋のお風呂ならいつでも入れるから、大浴場がいい」
「ん」

荷物を広げて準備し始める彼女に、ラッピングされた袋を差し出す。

「えっ、何?」
「何って、開けたら分かるよ」
「……っっ、これにすればいいのね」
「よろしくな、奥さん♪」

ランジェリーメーカーの社長だし、デザイナーでもある。
久しぶりの旅行だし、風呂上りと言ったら、これは定番だろ。

彼女に手渡したのは、試作で作ったランジェリー。
もちろん、彼女にぴったりのサイズだ。

黒地に白いレースを重ねたバイカラーの仕様で、アンダーからトップ、鎖骨までのラインが綺麗なデザイン。
細部に至るまでレースの図柄に拘り、栞那をイメージして作ったものだ。



「わぁ~、凄い量のお造りだね」
「最近、寿司屋にも連れてってやれてないしな。東京じゃ食べれない魚もあるぞ」
「え、うそっ、どれ?!」

基本引き籠りタイプの栞那だから、ご当地物に目がない。
風呂から戻った彼女のテンションが一気に爆上がりした。

江戸時代から夕景の名所として名高い場所にあるこの旅館は、旬の新鮮な食材をふんだんに使った料理が人気。
特にお造りが有名で、海外からも足繁く通う人が結構いるらしい。

「日本酒?ビールにしとくか?」
「そんなに強くないけど、やっぱり日本酒でしょ!」
「じゃあ、口当たりまろやかなやつを頼んでやるよ」
「さすが、いっくん♪」

幾つか飲めそうな酒を頼み、窓からの夕景を彼女と一緒に暫し眺める。