Special Edition ②


「髪、乾かし終わったか?」
「うん」

久しぶりに夫婦らしい会話をする私たちは、意外にもプラトニックな関係のようだ。
疲れた時ほどサウナでリフレッシュする彼は、結局髪と体を洗った後、隣りのサウナルームに私を連れて行った。

まぁ、私もサウナ好きだからそれは別にいいんだけど。
何て言うか。
バスタオル一枚姿の夫婦なのに、おでこにキスだけって。
べ、別に……何かを期待していたわけじゃ……。
いや、してたよ。
だって、本当に久しぶりに彼の顔をじっくり見れたんだもん。
だから、もう『女』として見て貰えないのかな?とか、要らぬことを考えてしまう。

「今日一日、何してたんだ?」
「……アプリみたいなものを試作してた」
「へぇ~」

興味ないでしょ、こんな話。
彼の頭の中は、常に経営とデザインのことだらけなんだから。

「明日は早いの?」
「ん~そんな早くでもないかな」
「……そう」

ドレッサーの鏡越しに彼と視線が交わる。

ベッドの上でタブレットPCを見ていた彼の口元がフッと緩まった。

「今月末に時間作るから、温泉でも行くか?」
「え?……温泉?」
「あぁ、たまには妻孝行しないと、捨てられそうだしな」
「っ……捨てたりなんてしないよっ」

捨てられるのは、私の方だよね。
料理もできないし、色気もないし。
仕事のアドバイスはできないし、可愛げもない。
もう少し素直に甘えられたらいいんだろうけど。

「じゃあ、決まりな。そんな遠くには行けないけど、よさそうな宿、取ってくよ」
「うんっ」

ずーっと放っておかれていたことなんて、彼の一言で全部帳消しになる。
私って、本当に彼に骨抜きにされてる。