バスタオル姿で鉢合わせしてしまった私は、あれよあれよという間にバスルームへと引き戻された。
「のぼせそうだよ」
「じゃあ、ここに座ってて」
バスタブのふちをトントンと叩く彼。
私の視線なんてさして気にも留めず、堂々と髪を洗っている。
こういう時の彼は何を言っても聞かない。
「仕事、大丈夫だったの?」
「ん?……あぁ、キリのいい所で上がったから」
「それならいいんだけど」
今朝、我が儘を言ってしまったことをちょっと後悔していた。
あんなことを言えば、彼なら絶対に時間を調整して早めに切り上げるのが分かってるから。
けれど、我が儘を言ったとしても、過労で倒れるよりはマシだと思えて。
久しぶりに夫婦水入らずの入浴。
私から誘うことなんて無いから、彼から誘われなければこういうシチュエーションにさえならないのだけれど。
毎日遅くまで仕事に追われている彼に、ここのところ暫く甘えてなかったから。
こんな風に訪れた夫婦の時間が愛おしく思える。
「背中、洗うね」
「おっ、サンキュ」
髪を洗い流した彼の背中にぎゅっと抱きついた。
「え、……新手のサービスか何かか?」
「……へ?ち、違うよっ!」
変に勘違いさせてしまったようだ。
肩幅のある大きな背中を見て、ついつい抱きつきたくなっただけなんだけど。
スポンジにボディソープをつけ、クシュクシュと馴染ませていると、おでこに優しくキスが落とされた。
「体洗うの、後じゃダメ?」
「へ?」
「どうせ汗掻くし、終わってからにしようよ」
「……終わっ……ッ?!」
絡まった彼の眼差しは、既に熱く滾っていた。



