「悠真っ、どうしたの?!」
スーツ姿の悠真が駆け寄って来た。
「彼氏君?」
「あ、……はい」
「若いね」
隣りにいる戸崎さんがぼそっと呟いた。
「仕事は?」
「終わらせて来た」
「明日の始発で帰ったのに」
「驚かせたくて」
悠真が戸崎さんに鋭い視線を向けている。
そりゃあ、夜遅くに会社から二人きりで出て来たら怪しむよね。
そんな事より、悠真はいつからここで待ってたんだろう?
社長を引き継いだわけではないけれど、ゆくゆくは自分の会社になる。
まだだから気を遣って外で待ってたのかな…。
「初めまして、大阪支社の営業部の戸崎です」
悠真より十歳以上も年上の戸崎さんは、余裕の顔で名刺を差し出した。
その名刺にチラッと視線を落とし、ある程度のことを把握したのか。
悠真はふいっと笑みを零して、自身の名刺を取り出した。
「初めまして。東京本社のIR企画室の蓮水です」
「……蓮水?」
名刺を凝視した戸崎さんが、悠真に視線を向け、その視線を私へと寄こして来た。
「彼、社長の息子さんです」
「あぁ、なるほど。で、白井さんの恋人なわけね」
「……はい」
戸崎さんが初めて標準語を話した。
話せないわけではなく、あえて大阪弁を使っていたようだ。
……私の緊張を解すため?なのかな??
「蓮水さん」
「はい」
「連日遅くまで白井さんには仕事して頂いてまして、繁華街に社屋があるため、送り届けようとしただけです。他意はありませんので」
「……そうですか」
「蓮水さんがいらしたのなら、自分は不要だと思いますので、ここで失礼します。白井さん、また来週」
「はい、お疲れさまでした」
戸崎さんが駅へと歩いて行く後ろ姿を見送り、悠真へと視線を向けると。



