4月1日。

「まどか~」
「はぁぁ~~い」

朝6時に目覚ましで起きて、シャワーと朝食をとって出掛ける準備をした。
この後、母親に連れられ、母が勤務するRainbow Bridgeの本社ビルに行く事になっている。

現在の時刻、7時15分。
春休み中だから、普段はもっとのんびり寝ているんだけど、今日だけは何としても遅刻ができない。
だって……。

「上條さんのお宅へは、10時でいいのよね?」
「うんっ」
「手土産は用意してあるから、あとはまどかを仕上げればいいわけね」
「……うん」

今日は私の誕生日、……なんだけど。
5日ほど前に帰国された彼のご両親が、明日の便でまた出国すると聞かされ、急遽一日デートが半日デートにすり替わった。
デートはいつでもできるからいいんだけど。
初めてご両親に会うという超特大ミッションが課せられている。

そんな私にイベント好きな母親が、会社で契約しているプロのヘアメイクさんを朝一で手配してあるからと、その待ち合わせ場所である会社に向かっているのだ。

だ、だっ、大丈夫だろうか?



「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。高校生らしく、可愛く仕上げてあげるからね♪」
「よ、よろしくお願いしますっ」
「ホント、相変わらず美人だよね~」
「私と由くん(まどかの父親)の娘ですもの♪」
「ハハッ、そうでしたそうでした!」

小ミーティングルームに用意された控室みたいな感じの空間で、椅子に座る私の胸元から肩にかけてタオルが掛けられる。

マキさん(プロのヘアメイク・三十四歳)とは、母の仕事に随行していて何度か会っているから顔見知りだ。
スレンダーなアジアンビューティーで、大学生の頃に雑誌モデルをしていたらしい。