「……かなっ……めッ」

俺の腕の中で浅い呼吸を繰り返す杏花。
結局、最後は上階の寝室のベッドに運んだんだけど。

さすがに、俺の方が限界というか……。

だって、ダイニングテーブルじゃ可哀そうかと思って、リビングのソファーに移動して。
ここならいいかと攻め始めたら……。

想像を遥かに超える反応を示すから、ついつい理性を手放して強引に攻め続けて。
普段より感じているのか、羞恥心で乱れているのか、紙一重。

けれど、拒絶されるでもなく、逃げるでもなく。
何をどうしていいのか分からなかったのかもしれないけれど。
駄々洩れのフェロモンに煽られた俺の方がもたなそうで。

結局、白旗を上げたのは俺の方。
あれ以上、リビングや上階へと続く階段でしてたら、マジで野獣化しそうで。

杏花にとって『いい夫』『優しい旦那』『カッコいい伴侶』でありたいから。

豹変する前に引き上げた……というわけ。
情けない。
カッコ悪っ。

若い時に散々遊び尽くして培ったスキルはどこに行ったのやら。
愛妻の前では何の意味ももたないようで。

煽るつもりが、完全に煽られっぱなしで。
彼女の色気に、ただただ翻弄されて。

この、腕の中に収まる美しい愛妻に、俺は今日も、全身で倖せを噛み締める。

「ん?」

杏花がぼそぼそと何やら呟いてる。
彼女の口元に耳を近づけると……。

「……明るいうちから、……こういうことすると、罪悪感みたいなのでドキドキするねっ」
「フッ」

なるほどな。
カーテンを閉めても、リビングのカーテン自体は遮光ではないから必然的に多少は明るい。
それが、原因だったのか。

良いこと聞いちゃった♪
これ、今後使わせて頂きます!

「来週も、斗賀を本宅に預けるか」
「ッ?!!!」

俺らのお楽しみタイムは、夜限定というカテゴリーには収まりきらず。
今後は、昼だろうが朝だろうが。
新婚当初のあのドキドキ感を味わうのが夫婦の秘訣らしい♪

~FIN~