Special Edition ②


「杏花、行って来る」
「いってらっしゃい」

マークとの商談を終え帰宅した俺は、再び階下のオフィスフロアへと向かう為に、玄関で愛妻に見送られている。

「なるべく早くに帰るから」
「うん。……お仕事頑張って」

17時半過ぎ。
本来なら退社時間だから、このまま直帰扱いで自宅にいても構わないけれど、山積みの仕事を少しでも片付ける為に仕事場へと戻らねばならない。

こんな可愛い妻を残して……。
あぁ~~行きたくねぇ~~。

「要?……要??」
「あ、…ん」

魂が行きたくないと必死に訴えているから、足底が玄関の床にくっついているようで。
そんな俺を心配そうに覗き込む杏花。
盛大な溜息を溢しながら、彼女を抱き締めた。

マジで行きたくねぇ~~っ!!

「……なめっ……く……るしぃっ……」
「っ……ごめんッ」

背中をタップされ、拘束する腕を弱める。
すると、杏花は俺の両肩に手を置き、目一杯背伸びした。

玄関にチュッと艶めいたリップ音が鳴り響く。

「っ……」
「早く帰って来てね?」

自分からしておきながら恥ずかしがる杏花。
そんな彼女が可愛くて堪らない。

「3時間だけ待ってて」

約束を刻印するかのように、額に口づけて。
俺は愛妻を玄関に残して、オフィスフロアへと降りるシークレットエレベーターへと歩を進めた。



「早い、お戻りで」
「……何だよ、もう少しゆっくりしててよかったのかよっ」
「いえ、……助かります」

職場の自室へと戻ると、入口で沢田に嫌味を言われた。
杏花がいるから、すんなりと戻らないと思っていたようで。
それならそれで、『1時間後に』とか言えばいいものを。

「さっさと片付けるぞ」