自宅兼オフィスに戻る車内で、俺の肩に頭を乗せる杏花。
あまり得意ではないゴルフと接待で、疲れ切ってしまったようだ。
気持ちよさそうに規律のいい寝息を立てている。
「杏花様のお陰で、全て上手く行きましたね」
「ん、……ホント、杏花なしではどうにもならなかったな」
「杏花様へ、何かプレゼントでもされては如何ですか?」
「プレゼントか……そうだな」
ここ最近、プレゼントらしいものをしてなかったから、いいかもしれない。
とはいえ、何をあげたらいいのやら。
「聡だったら本田に何をあげる?」
「……俺?………やっぱりのんびり出来る、時間か?」
「……だよな。悪いな、あまり纏まった休みを取らせてやれなくて」
休日にしていても、今日みたいに急な接待や商談が入ることもしょっちゅう。
自社だけでなく、今は会長の補佐業務で一条グループの総括もしているから、休みはあってないようなもの。
「プロポーズしたのか?」
「ッ?!……何だよ、いきなり」
「いきなりじゃないだろ。もう何年もずっと同じ質問してんだけど」
「………」
俺が杏花と知り合う前から付き合ってるのに、未だに結婚してない二人。
紙にサインして判を押すだけなのに、何がそれを足止めしてんだか。
お互いにかけがえのない存在だと分かってるくせに、どうも最後の一手が決まらないようだ。
「んっ……」
「……ん?どうした?」
運転する沢田は、ルームミラー越しに後部座席に座る要にチラッと視線を向けた。
「いや、何でもない。ちょっと考えごとして」
要の視線の先には、微笑む杏花が。
長い髪で顔がかくれているから、沢田には起きているのが気付かれてないようだ。
そんな杏花は、膝の上に置かれた要の手のひらに、指文字で伝えて来る。
『いい考えがある』と。



