ケーキが焼けている間にプレゼント交換をする流れになり、一人一つ、用意してきたプレゼントを持ち寄る。
「じゃあ音楽かけるよー」
私はプレゼント交換用の音楽を流すと、席に着く。
「あ、どっち回しか決めてなかった・・・」
「ほんとだっ!えーっと・・・適当にこっち!」
「はーいじゃあこっち回しねー」
「回せ回せ―」
みんな好き勝手言いながらプレゼントを回していく。
そして私の手元に青色の包装紙のプレゼントが回ってきた瞬間、音楽が途切れた。
(これ誰のだろう?)
不思議に思いながら見渡すと、愛架ちゃんが私の用意したプレゼントを手に持っていることに気づく。
「あ、愛架ちゃんの、私のやつ」
「そうなん?あたしのは・・・凜が持ってるわ」
「これ愛架のかー!ちなみにあたしのは音央がもってるやつ!!」
「で、私が用意したやつを涼我がもってる、と」
と、いうことは。
私が今持っているのは・・・。
ちらっと視線を瀬名くんに向けると、少し気まずそうにうなずきを見せた。
「えっと・・・あかりちゃんがもってんのが、俺の・・・」
「そっか・・・・開けていい?」
「ん」
瀬名くんからのプレゼント・・・って、よく考えると初な気がする。
さっそく開けて感想を言い合うみんなを横目に、私は丁寧に丁寧に包み紙をはがした。
「・・・・くしと手鏡?」
レモンのがらのポケットサイズの手鏡に、同じレモンイエローの折りたためるヘアコーム。
さすが瀬名くんと言いたくなるような、女心のわかったプレゼントだった。
(・・・瀬名くんからの・・・プレゼント・・・)
なんだかそう思うだけで、高いお店の質の良い品よりずっといいものに思えてくるから不思議だ。
私はさっそく鏡を開く。
鏡にうつる自分は自分でも意識していなかったけど口の端が緩んでいた。
内心ものすごく喜んでいることを悟られないよう、あわてて口の端を引き締め、もらった手鏡とくしを包みに戻した。
(・・・明日から毎日学校に持っていこう・・・!!)
そんなことを思いつつ、プレゼントトークで盛り上がるみんなの話に耳を傾けた。
そうこうしている内にあっという間に20分ほど経ち、シフォンケーキが焼きあがった。
「できたっ!」
いつも通り、凜が目をきらきら輝かせて真っ先にキッチンへ走っていく。
それをやれやれって感じで笑って見つめながら、愛架ちゃんと音央ちゃんも立ち上がる。
私もキッチンに向かおうとして、瀬名くんが座ったままぼんやりしていることに気が付いた。
「・・・瀬名くん、どうかした?」
「えっ」
私の声かけではっとして、慌てて立ち上がる瀬名くん。
焦りすぎてか、一瞬立つときふらつく。
「わっ、大丈夫?」
思わず手を伸ばして、瀬名くんの腕をつかんでしまった。
一瞬ふらついただけだったので別に手を貸す必要なんてなかったのだけれど、つい反射的に手が伸びたのだ。
そのせいで私と瀬名くんの距離が、一瞬にして近づく。
「あ・・・」
それに気づき、頬が熱くなるのを感じた。
たぶん私の顔は今真っ赤だろう・・・。
そう思うと、瀬名くんに自分の表情を見られるのが恥ずかしくて、つい顔をそらした。
「ご、ごめ・・・つい手が・・・」
そう言って手を放そうとしたが、その瞬間に瀬名くんに腕をつかまれた。
「えっ」
離れようとしたのに離れられなかったので、思わず驚いて声をあげてしまった。
「・・・あかりちゃん、俺・・・、たぶん・・・きっとみんなが思ってる、ような・・・人じゃなくて・・・」
「へ・・・?」
唐突な話に、私は戸惑って瀬名くんを見上げた。
「優しいのも、気つかえんのも・・・そういう風に見えるように作ってるだけだし・・・・、たぶん、あかりちゃんもほんとの俺のこと知ったら・・・」
瀬名くんの瞳が、不安そうにゆれる。
「今までだってそう・・・だったし・・・、お、俺のそばに・・・ずっといてくれる人なんて・・・いなくて・・・・」
「・・・ど、どういう・・・」
瀬名くんの顔・・・少し、赤い・・・?
「父さんも、母さんも、親戚の人たちだって・・・葵くんもハルも優紀も・・・」
瀬名くんの声が、震えている。
瀬名くんの瞳が、震えている。
瀬名くんの額に、汗がつたった。
「あかりちゃんも、い・・・つか・・・」
「瀬名くん・・・?」
私が呼びかけた瞬間、瀬名くんが突然私に抱き着いてきた。
「へっ!?えっ!?」
思わず全力で叫んだが、しかし抱き着いてきた瀬名くんの力は弱々しくて、それどころか次の瞬間にずるずると下に崩れ落ちていく。
そして私に抱き着いたまま、床にへたり込んだ。
「え?え・・・?」
戸惑いつつ瀬名くんをのぞき込むと、瀬名くんは荒い息をしながら目をつむっていた。
「・・・・待って、そういうこと!?」
慌てて瀬名くんの額に触れると、案の定かなりの熱があった。
「あかりー、急に叫んでどうし・・・・ってほんとどうした!?」
私の先ほどの叫び声を聞いて様子を見に来た三人が、私に抱き着いたままへたり込む瀬名くんを見て目をむく。
「せ、瀬名くん熱があるみたいで・・・!さっきふらってしたと思ったら今急に倒れこんじゃって・・・!!」
「熱!?」
私ふくめ、みんな気づかなかったようだ。
でも思い返してみるとやけに食が細かったし、ぼんやりしてる瞬間が多かった・・・ような気もする。
慌てる私たちの中、唯一しっかり者の愛架ちゃんがすぐに冷静になる。
「みんな落ち着いて。時期的にインフルエンザってこともありえるから、まずあかりは瀬名から離れな。そんでマスクと換気。瀬名は一旦横にして、体冷やさないように」
「う、うん・・・」
私は自分の足もとでへたり込む瀬名くんの腕を、無理やり引きはがす。
できればソファーに寝かせてあげたいけど、女子だけでソファーまで運ぶのはかなり厳しそうなので、一旦床に寝かせ、布団を何枚かかけてあげる。熱が高かったので、額に冷却シートをはってあげた。
瀬名くんはその間も少し苦しそうにしていて、ぬぐってもぬぐっても汗が浮かぶ。
「この辺一帯は除菌できたよーっ」
「涼我が触れたお皿も一応洗いなおしてきた」
「換気も十分かな」
各々愛架ちゃんの指示に従って一連の対処を終える。
「さて・・・どうしようか、今日のとこは一旦解散にする?」
愛架ちゃんの提案で解散の流れになったが、いくつか問題がある。
「ケーキと・・・あと瀬名。どうしよう」
ケーキは最悪各自持ち帰ればいい。
幸いケーキ作りに瀬名くんは参加していなかったし、食べても問題はないはず・・・。
一番の問題は瀬名くんだ。
「・・・・瀬名くんはしばらく寝かせて、どうするかは起きてから本人と相談するよ。みんなは気にせず帰ってもらって大丈夫」
みんなは少し後ろ髪をひかれる様子だったが、瀬名くんが起きるまでもうすることもなさそうなので、ケーキだけ切り分けて、各々帰路に着いた。
「じゃあ音楽かけるよー」
私はプレゼント交換用の音楽を流すと、席に着く。
「あ、どっち回しか決めてなかった・・・」
「ほんとだっ!えーっと・・・適当にこっち!」
「はーいじゃあこっち回しねー」
「回せ回せ―」
みんな好き勝手言いながらプレゼントを回していく。
そして私の手元に青色の包装紙のプレゼントが回ってきた瞬間、音楽が途切れた。
(これ誰のだろう?)
不思議に思いながら見渡すと、愛架ちゃんが私の用意したプレゼントを手に持っていることに気づく。
「あ、愛架ちゃんの、私のやつ」
「そうなん?あたしのは・・・凜が持ってるわ」
「これ愛架のかー!ちなみにあたしのは音央がもってるやつ!!」
「で、私が用意したやつを涼我がもってる、と」
と、いうことは。
私が今持っているのは・・・。
ちらっと視線を瀬名くんに向けると、少し気まずそうにうなずきを見せた。
「えっと・・・あかりちゃんがもってんのが、俺の・・・」
「そっか・・・・開けていい?」
「ん」
瀬名くんからのプレゼント・・・って、よく考えると初な気がする。
さっそく開けて感想を言い合うみんなを横目に、私は丁寧に丁寧に包み紙をはがした。
「・・・・くしと手鏡?」
レモンのがらのポケットサイズの手鏡に、同じレモンイエローの折りたためるヘアコーム。
さすが瀬名くんと言いたくなるような、女心のわかったプレゼントだった。
(・・・瀬名くんからの・・・プレゼント・・・)
なんだかそう思うだけで、高いお店の質の良い品よりずっといいものに思えてくるから不思議だ。
私はさっそく鏡を開く。
鏡にうつる自分は自分でも意識していなかったけど口の端が緩んでいた。
内心ものすごく喜んでいることを悟られないよう、あわてて口の端を引き締め、もらった手鏡とくしを包みに戻した。
(・・・明日から毎日学校に持っていこう・・・!!)
そんなことを思いつつ、プレゼントトークで盛り上がるみんなの話に耳を傾けた。
そうこうしている内にあっという間に20分ほど経ち、シフォンケーキが焼きあがった。
「できたっ!」
いつも通り、凜が目をきらきら輝かせて真っ先にキッチンへ走っていく。
それをやれやれって感じで笑って見つめながら、愛架ちゃんと音央ちゃんも立ち上がる。
私もキッチンに向かおうとして、瀬名くんが座ったままぼんやりしていることに気が付いた。
「・・・瀬名くん、どうかした?」
「えっ」
私の声かけではっとして、慌てて立ち上がる瀬名くん。
焦りすぎてか、一瞬立つときふらつく。
「わっ、大丈夫?」
思わず手を伸ばして、瀬名くんの腕をつかんでしまった。
一瞬ふらついただけだったので別に手を貸す必要なんてなかったのだけれど、つい反射的に手が伸びたのだ。
そのせいで私と瀬名くんの距離が、一瞬にして近づく。
「あ・・・」
それに気づき、頬が熱くなるのを感じた。
たぶん私の顔は今真っ赤だろう・・・。
そう思うと、瀬名くんに自分の表情を見られるのが恥ずかしくて、つい顔をそらした。
「ご、ごめ・・・つい手が・・・」
そう言って手を放そうとしたが、その瞬間に瀬名くんに腕をつかまれた。
「えっ」
離れようとしたのに離れられなかったので、思わず驚いて声をあげてしまった。
「・・・あかりちゃん、俺・・・、たぶん・・・きっとみんなが思ってる、ような・・・人じゃなくて・・・」
「へ・・・?」
唐突な話に、私は戸惑って瀬名くんを見上げた。
「優しいのも、気つかえんのも・・・そういう風に見えるように作ってるだけだし・・・・、たぶん、あかりちゃんもほんとの俺のこと知ったら・・・」
瀬名くんの瞳が、不安そうにゆれる。
「今までだってそう・・・だったし・・・、お、俺のそばに・・・ずっといてくれる人なんて・・・いなくて・・・・」
「・・・ど、どういう・・・」
瀬名くんの顔・・・少し、赤い・・・?
「父さんも、母さんも、親戚の人たちだって・・・葵くんもハルも優紀も・・・」
瀬名くんの声が、震えている。
瀬名くんの瞳が、震えている。
瀬名くんの額に、汗がつたった。
「あかりちゃんも、い・・・つか・・・」
「瀬名くん・・・?」
私が呼びかけた瞬間、瀬名くんが突然私に抱き着いてきた。
「へっ!?えっ!?」
思わず全力で叫んだが、しかし抱き着いてきた瀬名くんの力は弱々しくて、それどころか次の瞬間にずるずると下に崩れ落ちていく。
そして私に抱き着いたまま、床にへたり込んだ。
「え?え・・・?」
戸惑いつつ瀬名くんをのぞき込むと、瀬名くんは荒い息をしながら目をつむっていた。
「・・・・待って、そういうこと!?」
慌てて瀬名くんの額に触れると、案の定かなりの熱があった。
「あかりー、急に叫んでどうし・・・・ってほんとどうした!?」
私の先ほどの叫び声を聞いて様子を見に来た三人が、私に抱き着いたままへたり込む瀬名くんを見て目をむく。
「せ、瀬名くん熱があるみたいで・・・!さっきふらってしたと思ったら今急に倒れこんじゃって・・・!!」
「熱!?」
私ふくめ、みんな気づかなかったようだ。
でも思い返してみるとやけに食が細かったし、ぼんやりしてる瞬間が多かった・・・ような気もする。
慌てる私たちの中、唯一しっかり者の愛架ちゃんがすぐに冷静になる。
「みんな落ち着いて。時期的にインフルエンザってこともありえるから、まずあかりは瀬名から離れな。そんでマスクと換気。瀬名は一旦横にして、体冷やさないように」
「う、うん・・・」
私は自分の足もとでへたり込む瀬名くんの腕を、無理やり引きはがす。
できればソファーに寝かせてあげたいけど、女子だけでソファーまで運ぶのはかなり厳しそうなので、一旦床に寝かせ、布団を何枚かかけてあげる。熱が高かったので、額に冷却シートをはってあげた。
瀬名くんはその間も少し苦しそうにしていて、ぬぐってもぬぐっても汗が浮かぶ。
「この辺一帯は除菌できたよーっ」
「涼我が触れたお皿も一応洗いなおしてきた」
「換気も十分かな」
各々愛架ちゃんの指示に従って一連の対処を終える。
「さて・・・どうしようか、今日のとこは一旦解散にする?」
愛架ちゃんの提案で解散の流れになったが、いくつか問題がある。
「ケーキと・・・あと瀬名。どうしよう」
ケーキは最悪各自持ち帰ればいい。
幸いケーキ作りに瀬名くんは参加していなかったし、食べても問題はないはず・・・。
一番の問題は瀬名くんだ。
「・・・・瀬名くんはしばらく寝かせて、どうするかは起きてから本人と相談するよ。みんなは気にせず帰ってもらって大丈夫」
みんなは少し後ろ髪をひかれる様子だったが、瀬名くんが起きるまでもうすることもなさそうなので、ケーキだけ切り分けて、各々帰路に着いた。

