初めて入ったけど、そのお店はすごく雰囲気のいい店だった。
こじんまりとした個人経営独特のアットホームな感じがあり、お店には常においしそうなにおいが漂っていた。
「ご注文お決まりでしょうか?」
私は迷った末に和風おろしハンバーグを注文。
海くんはハンバーグとステーキがセットになったプレート、瀬名くんはチーズハンバーグ、音央ちゃんは豆腐ハンバーグを注文し、待ち時間が訪れた。
「じゃあ待ってる間にプレゼント交換する?」
「うん!」
どう交換するかという話になり、いくつか交換方法の案が出たけど、時計回りにプレゼントをまわす、というベタな展開に落ち着いた。
「じゃあ時計回りだからー・・・」
瀬名くんから海くんへ、海くんから私へ、私から音央ちゃんへ、音央ちゃんから瀬名くんへ、プレゼントを渡すことになった。
お互いプレゼントを渡し、いざ開封。
しかし開けようとする私を、海くんはじっと見つめてくる。
「か、海くん・・・そんなにみられるとやりにくい・・・かな・・・」
「あ・・・、す、すみません」
「ていうか海くんは開けなくていいの?」
「こいつからのプレゼントとかまじいらないっす」
そう言って不機嫌そうに瀬名くんをにらむ海くん。
瀬名くんも瀬名くんで、大人げなく海くんをわざとらしく鼻で笑った。
「そーかよ、まあ俺は音央ちゃんかあかりちゃんか凜ちゃんにって思って選んだから安心しろよ」
「・・・・」
確かに私も、かわいいデザインのやつなら凜に使われることになりそうだなとは思っていたけど・・・。
瀬名くんの洞察力もすごいけど、それを見越してプレゼントを選ぶのもどうかと思う・・・。
そんな中、音央ちゃんが真っ先にプレゼントをあけ終わる。
「あっ!これ!最初にかわいいって話してたやつ!!」
音央ちゃんには私のプレゼントが渡っているので、あのマグカップが握られていた。
「そう!かわいいよね!」
「え~、まじあかりセンス神がかってんじゃん」
「ありがとーっ」
音央ちゃんと私が話していると、そこに瀬名くんも加わる。
「音央ちゃんもセンス神がかってるじゃん」
「ほんと?」
「うん、このキーホルダー、俺も買おうか迷ったんだよね」
「そうなの!?奇跡じゃん!」
瀬名くんの言葉に、音央ちゃんはきらきらと目を輝かせた。
(・・・ほんと、瀬名くんって女の子の扱いうまいよね。ちょっとした言動の端々に、喜びそうだなーって言葉入れてきてさ)
まあ普段は私も、なんだかんだ彼の言葉で一喜一憂しているような気もするが。
だけど今日は、その彼の言葉が、全部音央ちゃんに向けられている。
喜ぶってわかって言っているきざったらしいセリフも・・・私に向けてもらえないのが、ほんの少し・・・いや実をいうと結構
悲しい。
だって今日は、私より音央ちゃんを喜ばせたいってことだから。
(・・・ううん、変なこと考えちゃだめ。瀬名くんとデートしてるのは音央ちゃんだもん、当たり前じゃん。私ってほんと、自分勝手だな・・・)
私は二人を邪魔するまいと、私は自分のプレゼントの開封にとりかかる。
これは、海くんからもらったプレゼントだ。
あけると、中からスノードームが出てきた。
「・・・それ、中にビニールで作られた飾りが入ってて・・・くらげが泳いでるみたいに見えるっていうやつ・・・なんですけど」
海くんが、おずおずと説明してくれた。
「き、気に入らなったですかね・・・?あの、えっと・・・こ、これでよければ交換しますし!」
「いやそれ俺のプレゼントだから」
瀬名くんからもらったプレゼントを渡そうとする海くんに、思わず瀬名くんも突っ込んだ。
「あ、あの・・・」
「海くん、ありがとう・・・」
スノードームをひっくり返すと、まるで小さな水族館みたいだ。
海くんと話した、あの小さなくらげの水槽が、そこに重なって見える。
私は海くんのほうにスノードームを向けると、スノードームごしに海くんを見た。
「海くん、みつけた」
「!!」
海くんはみるみるうちに赤面すると、机に突っ伏した。
「・・・おい、邪魔だからどけっての」
海くんの向かいに座る瀬名くんが、不機嫌そうにそう言って海くんを起こそうとする。
「・・・・」
「邪ー魔、ほら顔起こして。ひとりだけ中学生だからってわがままやめろよなー、ったく」
「・・・・」
「なんだよ、赤くなってんの見られんの嫌なの?」
「・・・~~っ、っるさい!そうだけどだめかよ・・・!」
海くんのその言葉で、一瞬瀬名くんは面食らった後、呆れたような表情になる。
「・・・君、呆れるぐらい素直だよね・・・」
さっきまで不機嫌そうに海くんをいじっていた瀬名くんも、牙を抜かれたようにいじるのをやめた。
「・・・・いいからとりあえずプレゼント開けたら」
瀬名くんにそう言われ、しぶしぶといった感じで海くんもプレゼントを開封する。
しかし中身を見た瞬間、一瞬手を止め、またも瀬名くんをにらんだ。
「ぜってー俺のこと想定してねーだろ!!」
「だから言ったんじゃん、音央ちゃんかあかりちゃんか凜ちゃんが使うことを想定してるって」
「くっそこいつ・・・」
海くんの手元には、くじらやヒトデのチャームがついたヘアゴムのセットだった。
海くんはかなり短めのスポーツ刈りなので、当然結びようもなく・・・。
海くんはめんどくさそうにプレゼントを箱にしまい、適当にバッグに放り込んだ。
「・・・・あ、それでね」
私はおずおずと話を切り出した。
「これ、プレゼント交換とは別にね、みんなに何かあげたいなって思って・・・よかったら受け取ってほしい」
実は、どうしてもあのイルカがプリントされたペンを瀬名くんにあげたくて、私はプレゼント交換とは別に、一人一人にプレゼントをあげることにしたのだ。
「これが海くんに、これが音央ちゃんに・・・・で、これが瀬名くんに、です」
高いものだと気を遣わせるだろうから、ちょっとしたものだ。
「かわいっ!最近ちょうどメイクポーチのチャック壊れてたの!ありがとうあかりっ!!」
音央ちゃんにはメイクポーチ。
最初にかわいいって話していたタオルと同じガラのもの。
「・・・ありがとうございます・・・俺、一生大事にします・・・」
「い、一生!?いつかはなくなると思うよ!?」
海くんには消しゴムとシャー芯。
まだ中学生だし、文房具ならしばらく使うだろうから。
「いえ、俺・・・ほんと、これ、大事にします」
海くんは本当に愛おしそうな表情で消しゴムを手で包み込んだ。
こんなに喜んでもらえるなら選んだ甲斐があるってものだ。
「・・・ん、これって・・・」
そして瀬名くんには・・・あのイルカのカラーペン。
瀬名くんがペンを手に取った瞬間、私は言いようもなく不安になった。
(そ、そういえば瀬名くんってそんなにノートまとめとかしないかも・・・!?だ、だとしたらめちゃくちゃいらないんじゃ・・・!!)
しかし私の不安を吹き飛ばすように、瀬名くんはふっと笑った。
「なんこれ、めっちゃかわいい」
かわいい。
それはもちろんそのイルカに贈られた言葉なんだけど・・・。
なんだか、その言葉を聞いただけで、私は恥ずかしくてくすぐったいような気持ちになった。
「しかもこれ、なんか涼我に似てる」
「えっまじ?俺こんなかわいいのー?」
「いや笑い方とかがって話ね?てか、もしかしてそれで選んだ?」
音央ちゃんも私と同じことを思ったみたい。
私はためらいがちにうなずく。
「実は・・・そうです」
「やっぱり!」
本当はこんなこと言うと、海くんも音央ちゃんも嫌な気持ちにさせるかと思って黙っておくつもりだったけど、まさか音央ちゃんのほうから振ってくるとは。
私の返答をきいた瀬名くんは少しびっくりしたような表情になった後、あのイルカそっくりの柔らかい笑みを浮かべた。
「それ、めっちゃうれしい」
「・・・!」
その声が、このまなざしが、あまりにも優しくて・・・。
心の奥深くまで、刻まれるようだった。
「はーい、お待たせしましたー、チーズハンバーグと豆腐ハンバーグ―――――」
そこで店員さんが料理を運んできた。
私たちは全員の料理がそろうと食事を始めた。
でも私はなんだか妙に瀬名くんが気になって。
緊張してうまく味わえなかった。
こじんまりとした個人経営独特のアットホームな感じがあり、お店には常においしそうなにおいが漂っていた。
「ご注文お決まりでしょうか?」
私は迷った末に和風おろしハンバーグを注文。
海くんはハンバーグとステーキがセットになったプレート、瀬名くんはチーズハンバーグ、音央ちゃんは豆腐ハンバーグを注文し、待ち時間が訪れた。
「じゃあ待ってる間にプレゼント交換する?」
「うん!」
どう交換するかという話になり、いくつか交換方法の案が出たけど、時計回りにプレゼントをまわす、というベタな展開に落ち着いた。
「じゃあ時計回りだからー・・・」
瀬名くんから海くんへ、海くんから私へ、私から音央ちゃんへ、音央ちゃんから瀬名くんへ、プレゼントを渡すことになった。
お互いプレゼントを渡し、いざ開封。
しかし開けようとする私を、海くんはじっと見つめてくる。
「か、海くん・・・そんなにみられるとやりにくい・・・かな・・・」
「あ・・・、す、すみません」
「ていうか海くんは開けなくていいの?」
「こいつからのプレゼントとかまじいらないっす」
そう言って不機嫌そうに瀬名くんをにらむ海くん。
瀬名くんも瀬名くんで、大人げなく海くんをわざとらしく鼻で笑った。
「そーかよ、まあ俺は音央ちゃんかあかりちゃんか凜ちゃんにって思って選んだから安心しろよ」
「・・・・」
確かに私も、かわいいデザインのやつなら凜に使われることになりそうだなとは思っていたけど・・・。
瀬名くんの洞察力もすごいけど、それを見越してプレゼントを選ぶのもどうかと思う・・・。
そんな中、音央ちゃんが真っ先にプレゼントをあけ終わる。
「あっ!これ!最初にかわいいって話してたやつ!!」
音央ちゃんには私のプレゼントが渡っているので、あのマグカップが握られていた。
「そう!かわいいよね!」
「え~、まじあかりセンス神がかってんじゃん」
「ありがとーっ」
音央ちゃんと私が話していると、そこに瀬名くんも加わる。
「音央ちゃんもセンス神がかってるじゃん」
「ほんと?」
「うん、このキーホルダー、俺も買おうか迷ったんだよね」
「そうなの!?奇跡じゃん!」
瀬名くんの言葉に、音央ちゃんはきらきらと目を輝かせた。
(・・・ほんと、瀬名くんって女の子の扱いうまいよね。ちょっとした言動の端々に、喜びそうだなーって言葉入れてきてさ)
まあ普段は私も、なんだかんだ彼の言葉で一喜一憂しているような気もするが。
だけど今日は、その彼の言葉が、全部音央ちゃんに向けられている。
喜ぶってわかって言っているきざったらしいセリフも・・・私に向けてもらえないのが、ほんの少し・・・いや実をいうと結構
悲しい。
だって今日は、私より音央ちゃんを喜ばせたいってことだから。
(・・・ううん、変なこと考えちゃだめ。瀬名くんとデートしてるのは音央ちゃんだもん、当たり前じゃん。私ってほんと、自分勝手だな・・・)
私は二人を邪魔するまいと、私は自分のプレゼントの開封にとりかかる。
これは、海くんからもらったプレゼントだ。
あけると、中からスノードームが出てきた。
「・・・それ、中にビニールで作られた飾りが入ってて・・・くらげが泳いでるみたいに見えるっていうやつ・・・なんですけど」
海くんが、おずおずと説明してくれた。
「き、気に入らなったですかね・・・?あの、えっと・・・こ、これでよければ交換しますし!」
「いやそれ俺のプレゼントだから」
瀬名くんからもらったプレゼントを渡そうとする海くんに、思わず瀬名くんも突っ込んだ。
「あ、あの・・・」
「海くん、ありがとう・・・」
スノードームをひっくり返すと、まるで小さな水族館みたいだ。
海くんと話した、あの小さなくらげの水槽が、そこに重なって見える。
私は海くんのほうにスノードームを向けると、スノードームごしに海くんを見た。
「海くん、みつけた」
「!!」
海くんはみるみるうちに赤面すると、机に突っ伏した。
「・・・おい、邪魔だからどけっての」
海くんの向かいに座る瀬名くんが、不機嫌そうにそう言って海くんを起こそうとする。
「・・・・」
「邪ー魔、ほら顔起こして。ひとりだけ中学生だからってわがままやめろよなー、ったく」
「・・・・」
「なんだよ、赤くなってんの見られんの嫌なの?」
「・・・~~っ、っるさい!そうだけどだめかよ・・・!」
海くんのその言葉で、一瞬瀬名くんは面食らった後、呆れたような表情になる。
「・・・君、呆れるぐらい素直だよね・・・」
さっきまで不機嫌そうに海くんをいじっていた瀬名くんも、牙を抜かれたようにいじるのをやめた。
「・・・・いいからとりあえずプレゼント開けたら」
瀬名くんにそう言われ、しぶしぶといった感じで海くんもプレゼントを開封する。
しかし中身を見た瞬間、一瞬手を止め、またも瀬名くんをにらんだ。
「ぜってー俺のこと想定してねーだろ!!」
「だから言ったんじゃん、音央ちゃんかあかりちゃんか凜ちゃんが使うことを想定してるって」
「くっそこいつ・・・」
海くんの手元には、くじらやヒトデのチャームがついたヘアゴムのセットだった。
海くんはかなり短めのスポーツ刈りなので、当然結びようもなく・・・。
海くんはめんどくさそうにプレゼントを箱にしまい、適当にバッグに放り込んだ。
「・・・・あ、それでね」
私はおずおずと話を切り出した。
「これ、プレゼント交換とは別にね、みんなに何かあげたいなって思って・・・よかったら受け取ってほしい」
実は、どうしてもあのイルカがプリントされたペンを瀬名くんにあげたくて、私はプレゼント交換とは別に、一人一人にプレゼントをあげることにしたのだ。
「これが海くんに、これが音央ちゃんに・・・・で、これが瀬名くんに、です」
高いものだと気を遣わせるだろうから、ちょっとしたものだ。
「かわいっ!最近ちょうどメイクポーチのチャック壊れてたの!ありがとうあかりっ!!」
音央ちゃんにはメイクポーチ。
最初にかわいいって話していたタオルと同じガラのもの。
「・・・ありがとうございます・・・俺、一生大事にします・・・」
「い、一生!?いつかはなくなると思うよ!?」
海くんには消しゴムとシャー芯。
まだ中学生だし、文房具ならしばらく使うだろうから。
「いえ、俺・・・ほんと、これ、大事にします」
海くんは本当に愛おしそうな表情で消しゴムを手で包み込んだ。
こんなに喜んでもらえるなら選んだ甲斐があるってものだ。
「・・・ん、これって・・・」
そして瀬名くんには・・・あのイルカのカラーペン。
瀬名くんがペンを手に取った瞬間、私は言いようもなく不安になった。
(そ、そういえば瀬名くんってそんなにノートまとめとかしないかも・・・!?だ、だとしたらめちゃくちゃいらないんじゃ・・・!!)
しかし私の不安を吹き飛ばすように、瀬名くんはふっと笑った。
「なんこれ、めっちゃかわいい」
かわいい。
それはもちろんそのイルカに贈られた言葉なんだけど・・・。
なんだか、その言葉を聞いただけで、私は恥ずかしくてくすぐったいような気持ちになった。
「しかもこれ、なんか涼我に似てる」
「えっまじ?俺こんなかわいいのー?」
「いや笑い方とかがって話ね?てか、もしかしてそれで選んだ?」
音央ちゃんも私と同じことを思ったみたい。
私はためらいがちにうなずく。
「実は・・・そうです」
「やっぱり!」
本当はこんなこと言うと、海くんも音央ちゃんも嫌な気持ちにさせるかと思って黙っておくつもりだったけど、まさか音央ちゃんのほうから振ってくるとは。
私の返答をきいた瀬名くんは少しびっくりしたような表情になった後、あのイルカそっくりの柔らかい笑みを浮かべた。
「それ、めっちゃうれしい」
「・・・!」
その声が、このまなざしが、あまりにも優しくて・・・。
心の奥深くまで、刻まれるようだった。
「はーい、お待たせしましたー、チーズハンバーグと豆腐ハンバーグ―――――」
そこで店員さんが料理を運んできた。
私たちは全員の料理がそろうと食事を始めた。
でも私はなんだか妙に瀬名くんが気になって。
緊張してうまく味わえなかった。

