『朝、迎えに行ってもいいですか?』
デート前日、海くんからそんな連絡がきた。
OKしようとしたところで、メッセージが追加で送られてきた。
『ダブルデートになっちゃったから、少しでも二人きりの時間、伸ばしたいです』
直球すぎる海くんの口説きに、一瞬面くらったものだ。
そのときのことを思い出しつつ、髪を巻いているとチャイムが鳴った。
「あーっ来ちゃった・・・」
まだあと何束か巻き切れてなかったけどしかたない。
考え事なんかしながら準備しているから時間が足りなくなるんだ、私め。
とりあえず一旦玄関に向かい、扉を開けた。
「・・・はい」
「!」
扉を開けると、目の前に海くんが立っていた。
「お、おはよ・・・」
海くんはなんだか普段より大人びた格好をしていて、髪もきちんと整えられていて、なんだか見慣れた姿とは違った。
そのせいか、妙に緊張してしまった。
「・・・お、おはようございます」
海くんはというと、海くんは私以上に緊張した面持ちでたたずんでいた。
「・・・・あの、かわ・・・・・・・」
「ん?」
「えっと・・・」
海くんが何かを言いかけているけれど、今は時間の関係上カットさせてもらう。
「海くん!ちょっと準備が途中で・・・!あの、リビングにロウいるから遊んでて・・・!!」
ロウっていうのはうちで飼っている犬のことだ。
ハスキーなんだけど、一目会った時から海くんにめちゃくちゃなついている。
「あ・・・は、はい、わかりました」
私はそれだけ言い残して部屋へと戻る。
バスに間に合わなければ海くんだけじゃなくて音央ちゃんや瀬名くんも待たせることになってしまう。
(協力するって約束したのに遅刻なんてしたら・・・むしろ足引っ張ってるよね・・・!?)
私は大急ぎで残りの髪を巻き切ると、髪を固めて、少しだけメイクを直して、イヤリングをつけて部屋を出た。
焦りながら階段を下りていると、リビングから海くんの声が聞こえた。
(・・・?誰と話してるんだろ・・・?)
不思議に思ってそっと覗くと、海くんはとびっきり優しい表情でロウに話しかけていた。
「・・・ふ、ふふっ、ロウ、お前ほんとかわいいな」
その笑い方が、小さなころの海くんみたいで、思わず足を止めてしまった。
「ロウ、ローウ、こっち、こっち見て?」
ロウが海くんに駆け寄ると、海くんはまた優しくほほえむ。
「・・・なぁロウ、どうすればあかりさん振り向いてくれると思う?」
ロウは海くんの言葉なんて意にも介してないって感じで、目の前のおもちゃに夢中だ。
「ロウには簡単にかわいいって言えるんだけどなぁ・・・」
私はそのセリフを聞いてますます部屋に入りづらくなった。
けど、これ以上待たせるわけにもいかない。
私はわざと階段の中腹まで戻った。
「・・・・あーっ!髪よしっ!服よしっ!メイクよしっ!じゅ、準備万端ーっ!!」
と叫びながらどたばたとリビングに近づいていく。
そのままの勢いでリビングに滑り込むと、海くんが目を丸くしていた。
「・・・あかりさんっていっつもそんな感じで家出てるんですか・・・?」
「・・・あはは・・・」
いくらなんでもわざとらしすぎたか・・・。
「とっ、とりあえず行こっ!」
デートって感じの空気感から、なんかいつもの緩い会出かけ感になってしまったけど、まあこれはこれでよしとしよう。
「・・・いや、全然よくないですからね?」
「へ?」
家を出るとき海くんがそんなことを言ってきた。
「あかりさん今、普段の雰囲気っぽい感じになってよかった、とか思ってましたよね」
「なっ!?」
なんでわかった!?と思わず叫びそうになった。
「言ったでしょ、今日はあかりさんに俺のこと意識してもらうための一日なんですから・・・」
海くんは少し顔を赤らめてこっちをまっすぐに見つめてきた。
「普段の感じじゃだめです・・・、一日中ドキドキしてもらわないと、困ります」
「・・・・っあ、はい・・・」
「・・・あかりさんのせいでデートっぽさ消えちゃったんですけど」
「うっ、ごめん」
「けど」
海くんがぎこちない動きで私の手を取った。
そしてそのまま動揺する私の手を握った。
「・・・こっ、これでチャラです」
「・・・はい・・・」
「・・・て、抵抗しなくていいんですか、お、俺ずっとこのまま握ってますよ」
「だいっ、大丈夫です・・・!じゃなくてえっと・・・、問題ないです!!」
「そっ、それはよかったです・・・!!」
そのままバスで集合場所まで向かったのだが、手をつなぐと会話までぎこちなくなるから不思議だ。
何はともあれ、こうして私の壮大な一日が始まったわけだ。
デート前日、海くんからそんな連絡がきた。
OKしようとしたところで、メッセージが追加で送られてきた。
『ダブルデートになっちゃったから、少しでも二人きりの時間、伸ばしたいです』
直球すぎる海くんの口説きに、一瞬面くらったものだ。
そのときのことを思い出しつつ、髪を巻いているとチャイムが鳴った。
「あーっ来ちゃった・・・」
まだあと何束か巻き切れてなかったけどしかたない。
考え事なんかしながら準備しているから時間が足りなくなるんだ、私め。
とりあえず一旦玄関に向かい、扉を開けた。
「・・・はい」
「!」
扉を開けると、目の前に海くんが立っていた。
「お、おはよ・・・」
海くんはなんだか普段より大人びた格好をしていて、髪もきちんと整えられていて、なんだか見慣れた姿とは違った。
そのせいか、妙に緊張してしまった。
「・・・お、おはようございます」
海くんはというと、海くんは私以上に緊張した面持ちでたたずんでいた。
「・・・・あの、かわ・・・・・・・」
「ん?」
「えっと・・・」
海くんが何かを言いかけているけれど、今は時間の関係上カットさせてもらう。
「海くん!ちょっと準備が途中で・・・!あの、リビングにロウいるから遊んでて・・・!!」
ロウっていうのはうちで飼っている犬のことだ。
ハスキーなんだけど、一目会った時から海くんにめちゃくちゃなついている。
「あ・・・は、はい、わかりました」
私はそれだけ言い残して部屋へと戻る。
バスに間に合わなければ海くんだけじゃなくて音央ちゃんや瀬名くんも待たせることになってしまう。
(協力するって約束したのに遅刻なんてしたら・・・むしろ足引っ張ってるよね・・・!?)
私は大急ぎで残りの髪を巻き切ると、髪を固めて、少しだけメイクを直して、イヤリングをつけて部屋を出た。
焦りながら階段を下りていると、リビングから海くんの声が聞こえた。
(・・・?誰と話してるんだろ・・・?)
不思議に思ってそっと覗くと、海くんはとびっきり優しい表情でロウに話しかけていた。
「・・・ふ、ふふっ、ロウ、お前ほんとかわいいな」
その笑い方が、小さなころの海くんみたいで、思わず足を止めてしまった。
「ロウ、ローウ、こっち、こっち見て?」
ロウが海くんに駆け寄ると、海くんはまた優しくほほえむ。
「・・・なぁロウ、どうすればあかりさん振り向いてくれると思う?」
ロウは海くんの言葉なんて意にも介してないって感じで、目の前のおもちゃに夢中だ。
「ロウには簡単にかわいいって言えるんだけどなぁ・・・」
私はそのセリフを聞いてますます部屋に入りづらくなった。
けど、これ以上待たせるわけにもいかない。
私はわざと階段の中腹まで戻った。
「・・・・あーっ!髪よしっ!服よしっ!メイクよしっ!じゅ、準備万端ーっ!!」
と叫びながらどたばたとリビングに近づいていく。
そのままの勢いでリビングに滑り込むと、海くんが目を丸くしていた。
「・・・あかりさんっていっつもそんな感じで家出てるんですか・・・?」
「・・・あはは・・・」
いくらなんでもわざとらしすぎたか・・・。
「とっ、とりあえず行こっ!」
デートって感じの空気感から、なんかいつもの緩い会出かけ感になってしまったけど、まあこれはこれでよしとしよう。
「・・・いや、全然よくないですからね?」
「へ?」
家を出るとき海くんがそんなことを言ってきた。
「あかりさん今、普段の雰囲気っぽい感じになってよかった、とか思ってましたよね」
「なっ!?」
なんでわかった!?と思わず叫びそうになった。
「言ったでしょ、今日はあかりさんに俺のこと意識してもらうための一日なんですから・・・」
海くんは少し顔を赤らめてこっちをまっすぐに見つめてきた。
「普段の感じじゃだめです・・・、一日中ドキドキしてもらわないと、困ります」
「・・・・っあ、はい・・・」
「・・・あかりさんのせいでデートっぽさ消えちゃったんですけど」
「うっ、ごめん」
「けど」
海くんがぎこちない動きで私の手を取った。
そしてそのまま動揺する私の手を握った。
「・・・こっ、これでチャラです」
「・・・はい・・・」
「・・・て、抵抗しなくていいんですか、お、俺ずっとこのまま握ってますよ」
「だいっ、大丈夫です・・・!じゃなくてえっと・・・、問題ないです!!」
「そっ、それはよかったです・・・!!」
そのままバスで集合場所まで向かったのだが、手をつなぐと会話までぎこちなくなるから不思議だ。
何はともあれ、こうして私の壮大な一日が始まったわけだ。

