昼休みになって、私は凛に断りを入れて職員玄関のさに向かった。

 昼休みになってすぐ飛んできたので、まだチカラさんの姿はなかった。


(・・・貧血、か)


 朝の、チカラさんの台詞が頭をよぎる。

 登校中に貧血で倒れた・・・・。

 もしかしなくたってそうだ。
 昨日の吸血が原因に決まっている。


(・・・バカ・・・ほんと、私ってバカ・・)


 ぎゅっと目をつぶった瞬間、足音が聞こえて振り返る。


「・・・チカラさん」


 チカラさんは眉一つ動かさず、私の前で足を止めた。
 こころなしか、距離が遠い。


「・・・言っただろう、涼我とはもう関わるなって」

「・・・すみません」


 決断が遅すぎた。
 あの月曜日に伝えていれば、こうはならなかったかもしれない。


「大体どれだけ欲張れば倒れるほどの貧血になるんだ・・・涼我の身体のことを考えてくれよ・・・。君だって涼我の友達で、あいつに幸せになってほしいって、そう言ってただろう・・・!?」

「・・・・最近、飲む階数が増えてたんです・・・・、私の考えが至らなくて・・・・本当にすみませんでした・・・」


 私は深々と頭を下げた。
 顔は見えないけれど、チカラさんがぎゅっと拳を握ったのがみえた。


「・・・涼我に、もうやめようとは伝えたのか」

「・・・・はい、昨日・・・」

「そうか」


 チカラさんが、小さくため息をついたのが聞こえた。


「ならもういい、頭を上げてくれ。取り乱してすまなかった」


 チカラさんは私が頭をあげたのを見て、踵を返した。


「・・・君はたとえ普通の人でなくても、涼我に対する想いだけは疑いようのない、信頼できる存在だと心のどこかで思っていたんだが・・・間違いだったみたいだ」

「・・・っ」

「もう関わらないでくれ」