チカラさんと会ったその日の夜。
 私は薄暗い部屋の中で、スマホの画面をぼんやりと見つめていた。

 私の指が、ゆっくりと文字を打ち込む。


『瀬名くん。吸血のことなんだけど、これからは』


 そこまでうったところで、思い直して文章を消す。


『瀬名くん。急な話だけど、今後から吸血は』


 そこでまた私は手を止め、文章を消す。

 なんて言えばいいんだろう。
 なんて言えば納得させられるんだろう・・・自分を。

 瀬名くんとは距離を置くべきって頭でわかってても、心の中にそうしたくない自分がいる。

 どう言えば、自分の中で割り切れるんだろう。


「・・・・はぁ・・・」


 私の口から盛大なため息がもれた。

 私はスマホの電源ボタンを押すと、ベッドに突っ伏した。


「・・・・やっぱり自分の口から言おう」


 今すぐにこの瀬名くんとの関係を断ち切れなくて、逃げるようにそうつぶやいた。

 大丈夫、きっと次会うまでに。
 次会うまでに、割り切れるから。

 そして言おう。
 この関係を、終わりにしようって。