【瀬名くんside】
俺は教室を出ると、さっそく凜ちゃんを探しに向かった。
凜ちゃんがいるとすれば合唱の集まりか、部活の屋台か、係の仕事。
とりあえず場所がわかっているバレー部の屋台に向かうと、予想は的中した。
「あ、瀬名くんじゃん、どしたん?はっ!まさかまたうちの部に金を落としてくれようと・・・・!!」
「いや違うから」
「えー・・・」
不服そうな凜ちゃんはそれでも俺に押し売りを続ける。
「友達のよしみで10円勝ってあげるからさ!」
「それを言うなら10円負けるでしょ、値上がりしてるじゃん」
「あったりまえじゃん、搾取できるところからは搾取しないと!」
「思考が借金取りなんだけど」
このままじゃ埒があかないので本題を切り出す。
「ちょっと凜ちゃんに話があるんだけどさ」
「パフェ買ってくれるならいいよ」
「・・・・・わかったって。ここじゃ話しにくいから場所変えてもいい?」
「トッピング全部乗せするならいいよ」
「・・・・・・・」
結局俺はまた山盛りのパフェを手に、凜ちゃんとともにB棟の階段下に向かうこととなった。
「で、話って?もしかしてだけど後夜祭の話?」
「えっ、何、なんで知ってんの?」
「さっきあかりから連絡来てた。『瀬名くんが後夜祭私と過ごしていいか聞きに来ると思うからOKしてあげてほしい!瀬名くんのおかげでクラスの来客数が倍くらいになったの!その交換条件なの!約束してたのにごめん凜!!』だって」
どうやらすでに根回しが行われていたようだ。
「別にあかりから聞くから瀬名くんがわざわざ言いに来なくてもよかったのに。瀬名くん忙しいでしょ?」
「いや、ちょっとついでに報告あって」
報告、という言葉に首を傾げる凛ちゃん。
「あのときの質問に、答えようかなって」
「えーっとー・・・・どのとき?」
「学園祭期間中、俺に聞いてきたじゃん。あかりちゃんのことどう思ってる?って」
「!」
凛ちゃんが小さく目を見開いた。
「・・・・どう、思ってるの?」
「友達だと思ってた。けど違うかも」
「・・・・・」
「かもじゃないな、えっと、なんて言えばいいんだろ」
こういう気持ち、面と向かって誰かに話すのが初めてで、うまく伝えられない。
いや面と向かって話すのが初めてなんじゃない。
この気持ち自体が、きっと始めてだ。
「・・・・好き、だと思う。思うっていうか・・・好き」
この気持ちが、きっと初めてだ。
凛ちゃんは珍しく神妙な面持ちで俺の言葉を聞いていたけど、やがて口を開いた。
「薄々わかってたけど・・・自覚しちゃったか」
凛ちゃんは視線を下げ、しばらく考え込み、少しためらったような素振りを見せて、そしてまた口を開いた。
「・・・・後夜祭の件は協力するよ。私も一年二組のクラスメイトとして瀬名くんには感謝してるもん」
凛ちゃんは下げていた視線をあげ、俺の瞳を見つめ返してきた。
「けどそれだけ。これ以上協力はできない」
「・・・・・」
「あたしは海のお姉ちゃんだから」
海っていうと、夏祭りのあの子だ。
確かに凛ちゃんの弟って話は聞いた。
「やっぱそうなんだ、あの子あかりちゃんのこと狙ってんだ」
「・・・・あいつは生意気だしうるさいけどそれでも私の弟なの。生まれてこの方いっしょに育ってきて、そんでちっちゃいときからずっと海の恋を見守ってきたの。もうほんと、人生どんだけ賭けんだよって突っ込みたくなるぐらい長い恋」
前もこんな風に、普段はムードメーカーな凛ちゃんが真剣な顔で話してきたことがあった。
それが、あのときの質問をしてきたときだ。
それだけ、凛ちゃんは弟の恋を本気で応援してて。
だから俺のことを複雑な気持ちで考えていたのかもしれない。
「生意気だしうるさいけど・・・・背中を押してあげたいの・・・・」
「・・・・・」
「だから・・・・ごめん」
凛ちゃんが頭を下げた。
「いいよ。それにあかりちゃんのことは好きだけど、付き合いたいのかは・・・・自分でもよくわからない」
「・・・・その気持ちのほうがよくわかんないよ。好きだったら付き合いたいでしょ」
「・・・・普通ならそうかもね」
俺はふと時計を見上げ、そろそろ時間だと凛ちゃんに伝える。
「じゃあ、この辺で。後夜祭、譲ってくれてありがとう」
それだけ言って、俺は凜ちゃんと分かれた。
俺は教室を出ると、さっそく凜ちゃんを探しに向かった。
凜ちゃんがいるとすれば合唱の集まりか、部活の屋台か、係の仕事。
とりあえず場所がわかっているバレー部の屋台に向かうと、予想は的中した。
「あ、瀬名くんじゃん、どしたん?はっ!まさかまたうちの部に金を落としてくれようと・・・・!!」
「いや違うから」
「えー・・・」
不服そうな凜ちゃんはそれでも俺に押し売りを続ける。
「友達のよしみで10円勝ってあげるからさ!」
「それを言うなら10円負けるでしょ、値上がりしてるじゃん」
「あったりまえじゃん、搾取できるところからは搾取しないと!」
「思考が借金取りなんだけど」
このままじゃ埒があかないので本題を切り出す。
「ちょっと凜ちゃんに話があるんだけどさ」
「パフェ買ってくれるならいいよ」
「・・・・・わかったって。ここじゃ話しにくいから場所変えてもいい?」
「トッピング全部乗せするならいいよ」
「・・・・・・・」
結局俺はまた山盛りのパフェを手に、凜ちゃんとともにB棟の階段下に向かうこととなった。
「で、話って?もしかしてだけど後夜祭の話?」
「えっ、何、なんで知ってんの?」
「さっきあかりから連絡来てた。『瀬名くんが後夜祭私と過ごしていいか聞きに来ると思うからOKしてあげてほしい!瀬名くんのおかげでクラスの来客数が倍くらいになったの!その交換条件なの!約束してたのにごめん凜!!』だって」
どうやらすでに根回しが行われていたようだ。
「別にあかりから聞くから瀬名くんがわざわざ言いに来なくてもよかったのに。瀬名くん忙しいでしょ?」
「いや、ちょっとついでに報告あって」
報告、という言葉に首を傾げる凛ちゃん。
「あのときの質問に、答えようかなって」
「えーっとー・・・・どのとき?」
「学園祭期間中、俺に聞いてきたじゃん。あかりちゃんのことどう思ってる?って」
「!」
凛ちゃんが小さく目を見開いた。
「・・・・どう、思ってるの?」
「友達だと思ってた。けど違うかも」
「・・・・・」
「かもじゃないな、えっと、なんて言えばいいんだろ」
こういう気持ち、面と向かって誰かに話すのが初めてで、うまく伝えられない。
いや面と向かって話すのが初めてなんじゃない。
この気持ち自体が、きっと始めてだ。
「・・・・好き、だと思う。思うっていうか・・・好き」
この気持ちが、きっと初めてだ。
凛ちゃんは珍しく神妙な面持ちで俺の言葉を聞いていたけど、やがて口を開いた。
「薄々わかってたけど・・・自覚しちゃったか」
凛ちゃんは視線を下げ、しばらく考え込み、少しためらったような素振りを見せて、そしてまた口を開いた。
「・・・・後夜祭の件は協力するよ。私も一年二組のクラスメイトとして瀬名くんには感謝してるもん」
凛ちゃんは下げていた視線をあげ、俺の瞳を見つめ返してきた。
「けどそれだけ。これ以上協力はできない」
「・・・・・」
「あたしは海のお姉ちゃんだから」
海っていうと、夏祭りのあの子だ。
確かに凛ちゃんの弟って話は聞いた。
「やっぱそうなんだ、あの子あかりちゃんのこと狙ってんだ」
「・・・・あいつは生意気だしうるさいけどそれでも私の弟なの。生まれてこの方いっしょに育ってきて、そんでちっちゃいときからずっと海の恋を見守ってきたの。もうほんと、人生どんだけ賭けんだよって突っ込みたくなるぐらい長い恋」
前もこんな風に、普段はムードメーカーな凛ちゃんが真剣な顔で話してきたことがあった。
それが、あのときの質問をしてきたときだ。
それだけ、凛ちゃんは弟の恋を本気で応援してて。
だから俺のことを複雑な気持ちで考えていたのかもしれない。
「生意気だしうるさいけど・・・・背中を押してあげたいの・・・・」
「・・・・・」
「だから・・・・ごめん」
凛ちゃんが頭を下げた。
「いいよ。それにあかりちゃんのことは好きだけど、付き合いたいのかは・・・・自分でもよくわからない」
「・・・・その気持ちのほうがよくわかんないよ。好きだったら付き合いたいでしょ」
「・・・・普通ならそうかもね」
俺はふと時計を見上げ、そろそろ時間だと凛ちゃんに伝える。
「じゃあ、この辺で。後夜祭、譲ってくれてありがとう」
それだけ言って、俺は凜ちゃんと分かれた。