そしてついにその週の金曜日。
そう、今日は瀬名くんの誕生日!
私は朝からなんだかそわそわしてしまって、妙に早く目が覚めた。
なぜなら私は、学校で友達にプレゼントを渡すという経験がないから。
凜の誕生日は、凜の家族との誕生日パーティーにお邪魔するのでそこでプレゼントを渡している。逆もまた然り。
つまりこういう経験は初めてなのだ。
だけどそわそわしすぎて肝心なことを忘れていた。
「うわぁ・・・、すごい行列だねぇ・・・何、大名行列か何か?」
昼休み、私の机で弁当を食べる凜がそうつぶやいた。
その行列というのも、私の隣の席に座る瀬名くんに、誕生日プレゼントを渡すための行列なのだ。
「ほんとにね・・・」
やるせない気持ちを抱えつつ卵焼きを一口。
なんでこんなに重要なことを失念していたんだろう。
瀬名くんほどの人間だったら、こうなりうる可能性だってあるんだってこと。
・・・いやないか。
常人なら想像つかないか、ここまでの状況。
自分で自分につっこみながら、いつ渡したものかと考える。
「にしてももうすぐ文化祭だねー」
凜はもう瀬名くんに群がる行列に興味をなくしたのか、そう話題を変えてきた。
「そうだね。ここの文化祭ほんとにすごいから楽しみだよね」
「うちらの中学しょぼかったもんなー。ちなみにあかりはクラスの出し物何がしたい?」
「私はー・・・、そうだなー・・・、無難にカフェとか?」
「いいね!文化祭っぽい!メイド服とか来たいー!!」
凜は想像だけでわくわくしたような顔をした。
高校の文化祭はまだ経験したことがないけど、凜とまわった時の想像は容易につきそうだ。
たぶん夏祭りの時みたいに、高すぎるテンションで私を引っ張ってくれるんだろう。
「あ、凜、言っておくけど私のために他の子からの誘い断らなくていいからね」
「え、でもあかりがそれだと・・・」
「あの・・・、凜とまわらないときは・・・、一応、あの、瀬名くんがまわってくれるってことになってる・・・・まだ確定ではないけど・・・・」
「え!?」
凜はこれでもかというほど目を見開いたあと、隣で行列をさばく瀬名くんをちらっと見て、また私に視線を戻す。
「・・・・この瀬名くんと?」
そりゃ、隣でこんなに人気っぷりを見せつけられればこんな反応にもなる。
「うん・・・、一応、そういってたけど・・・・」
私ですらこの様を見せつけられれば、つい数日前に約束したのがウソなんじゃないかと思えてくるくらいだ。
「そっ・・・・かぁ・・・・」
凜は受け止めきれない現実をどうにか飲み込もうとしているようで、何度もゆっくり大きくうなずいた。
「え・・・、ち、ちなみにさ・・・、つ、付き合ってる・・・とかではないよね・・・?」
「はい!?違うよ!?」
「だっ、だよねー!!えっと・・・・ついでにちなみにさ、瀬名くんのこと好き・・・・とかでは・・・?」
「ないよ!!友達!!」
「だっ、だよねー!!」
凜はやっと生き返ったかのように大きく息をはいた。
「よかったー・・・・、弟の骨を拾いたくはないもんねぇ・・・」
「弟?って海くん?なんで?」
「あっ、なんでもない」
「そう?」
凜のよくわからない言動に首をかしげていると、スマホにメッセージが入った。
チカさんからだ。
『プレゼント渡せたか?』
そこでやっとチカさんのことに思い至る。むしろなんで忘れていたんだろう。
『チカさん・・・!チカさんこそ大丈夫ですか!?ちゃんと瀬名くんに渡せそうですか・・・!?』
今のところ、隣の席から見ている限りでは、まだチカさんは渡していないようだった。
『私のことは気にするな。渡す機会を設けてもらっているから』
それはよかったと胸をなでおろす。
もとはといえばチカさんの希望で瀬名くんへのプレゼントを買いに行ったのだ。
これでチカさんが渡せなくては本末転倒だ。
にしてもこれだけの女子が列を作っているというのに、わざわざ時間を設けてもらえるなんて、チカさんと瀬名くんはやはりかなり親密な関係なのではないのだろうか・・・・。
『それより九鬼さんのほうは大丈夫か?あいつ毎年とんでもない量もらうからな』
『そうなんですよ。今行列ができてます』
『やはりそうか・・・・』
『あ、でも気にしないでください。最悪来週とかになってもいいってつもりでいますから』
そう送ったけど、チカさんからは意外な返信が来た。
『いや渡すならやはり当日がいいだろ。必要なら九鬼さんが渡せるよう時間を設けてもらえないかあいつにかけあってみる』
『え!?いやいや大丈夫ですよ、そこまでしなくても・・・!』
『時間を設けるって言ってもぱっと渡すくらいなら大丈夫だろ。決まったらまた連絡する』
こうして一方的に話を終えられた。
まあ私としてはありがたい話だけど・・・・、こうすることでチカさんになんのメリットがあるのか本気でわからない。
それとも友達のためなら利益度外視でがんばれるってタイプなのか・・・?
にしても出会ってまだ日が浅い私にここまでやるものだろうか・・・・。
悩みながらも、チカさんからの返信を待つことにした。
だけどチカさんからの返信はないままに午後の授業が始まった。
そう、今日は瀬名くんの誕生日!
私は朝からなんだかそわそわしてしまって、妙に早く目が覚めた。
なぜなら私は、学校で友達にプレゼントを渡すという経験がないから。
凜の誕生日は、凜の家族との誕生日パーティーにお邪魔するのでそこでプレゼントを渡している。逆もまた然り。
つまりこういう経験は初めてなのだ。
だけどそわそわしすぎて肝心なことを忘れていた。
「うわぁ・・・、すごい行列だねぇ・・・何、大名行列か何か?」
昼休み、私の机で弁当を食べる凜がそうつぶやいた。
その行列というのも、私の隣の席に座る瀬名くんに、誕生日プレゼントを渡すための行列なのだ。
「ほんとにね・・・」
やるせない気持ちを抱えつつ卵焼きを一口。
なんでこんなに重要なことを失念していたんだろう。
瀬名くんほどの人間だったら、こうなりうる可能性だってあるんだってこと。
・・・いやないか。
常人なら想像つかないか、ここまでの状況。
自分で自分につっこみながら、いつ渡したものかと考える。
「にしてももうすぐ文化祭だねー」
凜はもう瀬名くんに群がる行列に興味をなくしたのか、そう話題を変えてきた。
「そうだね。ここの文化祭ほんとにすごいから楽しみだよね」
「うちらの中学しょぼかったもんなー。ちなみにあかりはクラスの出し物何がしたい?」
「私はー・・・、そうだなー・・・、無難にカフェとか?」
「いいね!文化祭っぽい!メイド服とか来たいー!!」
凜は想像だけでわくわくしたような顔をした。
高校の文化祭はまだ経験したことがないけど、凜とまわった時の想像は容易につきそうだ。
たぶん夏祭りの時みたいに、高すぎるテンションで私を引っ張ってくれるんだろう。
「あ、凜、言っておくけど私のために他の子からの誘い断らなくていいからね」
「え、でもあかりがそれだと・・・」
「あの・・・、凜とまわらないときは・・・、一応、あの、瀬名くんがまわってくれるってことになってる・・・・まだ確定ではないけど・・・・」
「え!?」
凜はこれでもかというほど目を見開いたあと、隣で行列をさばく瀬名くんをちらっと見て、また私に視線を戻す。
「・・・・この瀬名くんと?」
そりゃ、隣でこんなに人気っぷりを見せつけられればこんな反応にもなる。
「うん・・・、一応、そういってたけど・・・・」
私ですらこの様を見せつけられれば、つい数日前に約束したのがウソなんじゃないかと思えてくるくらいだ。
「そっ・・・・かぁ・・・・」
凜は受け止めきれない現実をどうにか飲み込もうとしているようで、何度もゆっくり大きくうなずいた。
「え・・・、ち、ちなみにさ・・・、つ、付き合ってる・・・とかではないよね・・・?」
「はい!?違うよ!?」
「だっ、だよねー!!えっと・・・・ついでにちなみにさ、瀬名くんのこと好き・・・・とかでは・・・?」
「ないよ!!友達!!」
「だっ、だよねー!!」
凜はやっと生き返ったかのように大きく息をはいた。
「よかったー・・・・、弟の骨を拾いたくはないもんねぇ・・・」
「弟?って海くん?なんで?」
「あっ、なんでもない」
「そう?」
凜のよくわからない言動に首をかしげていると、スマホにメッセージが入った。
チカさんからだ。
『プレゼント渡せたか?』
そこでやっとチカさんのことに思い至る。むしろなんで忘れていたんだろう。
『チカさん・・・!チカさんこそ大丈夫ですか!?ちゃんと瀬名くんに渡せそうですか・・・!?』
今のところ、隣の席から見ている限りでは、まだチカさんは渡していないようだった。
『私のことは気にするな。渡す機会を設けてもらっているから』
それはよかったと胸をなでおろす。
もとはといえばチカさんの希望で瀬名くんへのプレゼントを買いに行ったのだ。
これでチカさんが渡せなくては本末転倒だ。
にしてもこれだけの女子が列を作っているというのに、わざわざ時間を設けてもらえるなんて、チカさんと瀬名くんはやはりかなり親密な関係なのではないのだろうか・・・・。
『それより九鬼さんのほうは大丈夫か?あいつ毎年とんでもない量もらうからな』
『そうなんですよ。今行列ができてます』
『やはりそうか・・・・』
『あ、でも気にしないでください。最悪来週とかになってもいいってつもりでいますから』
そう送ったけど、チカさんからは意外な返信が来た。
『いや渡すならやはり当日がいいだろ。必要なら九鬼さんが渡せるよう時間を設けてもらえないかあいつにかけあってみる』
『え!?いやいや大丈夫ですよ、そこまでしなくても・・・!』
『時間を設けるって言ってもぱっと渡すくらいなら大丈夫だろ。決まったらまた連絡する』
こうして一方的に話を終えられた。
まあ私としてはありがたい話だけど・・・・、こうすることでチカさんになんのメリットがあるのか本気でわからない。
それとも友達のためなら利益度外視でがんばれるってタイプなのか・・・?
にしても出会ってまだ日が浅い私にここまでやるものだろうか・・・・。
悩みながらも、チカさんからの返信を待つことにした。
だけどチカさんからの返信はないままに午後の授業が始まった。