その後の夏祭りは遅ばせながらどうにか家族と合流し、花火を見ることができた。
ちなみにかき氷を買い忘れたのと大幅に遅れたのとでご立腹な凜をなだめるのには苦労した。
そして今年の夏祭りも波乱の末、無事終了した。
夏祭りから数日たったある日。
凜と瀬名くんとプールに行く約束が、目前に迫ったある日。
「あかりー、ちょっとみそと牛乳買ってきてくれないー?」
勉強をしていない姿を見られたせいか、お母さんがおつかいを頼んできた。
「えー・・・、日差し強いしやだよー・・・・」
「今料理始めちゃって手が離せないのよ。お駄賃あげるから」
「はぁい・・・・」
諦めて支度にとりかかる。
適当につかんだTシャツとジーンズ。それに、買い物袋代わりに放りだしてあった空っぽの通学かばんもつかむ。
そしていつもの腕カバーと日傘を装備して、めんどくささを抱えながら嫌々外に出た。
予想通り、恐ろしいほどの日差しがアスファルトを照り付けている。
私はとにかく早くスーパーに逃げ込もうと、急ぎ足で歩く。
(あっつ・・・・!!溶ける、溶ける・・・・!!!)
ただでさえ暑いのに全身完全防備。
一番近くのスーパーまでの距離が、果てしなく遠く感じる。
(ちょ、ちょっと一回影に逃げ―――――――)
そう思った瞬間ものすごい力でかばんをひったくられた。
「――――――っえ!?ひったくり!?」
はっとした瞬間には、もうひったくったやつは駆けだしていた。
「あ、ちょ、待って!!」
ひったくり犯が待ってと言われて待つわけないのに、そう呼びかけながら全速力で走って追う。
「ちょっともう!か、返してくださ・・・・っ!!・・・・うー・・・あっつい・・・!!!」
走りにくいけど日傘は捨てれない。
暑いけど腕カバーは捨てれない。
そんなどうにもならないジレンマを抱えつつどうにか見失わない距離をぎりぎりで保っている。
(私は体力ないからこのままじゃ逃がしちゃう・・・・!!誰か――――――!!)
心の中で叫んだ瞬間、まるで思いが通じたみたいに後ろから颯爽と誰かが私を追い抜いて行った。
その人はさらさらの黒髪をまっすぐになびかせながら、見る間にひったくり犯との距離を詰めていく。
そしてあっという間にひったくり犯に追いつくと、流れるような動作で華麗ひったくり犯を投げ飛ばした。
「ったく・・・・しょーもないことしやがって・・・」
その人は呆れたようにつぶやいてかばんを取り返すと、私のもとに歩み寄ってくる。
かわいらしい顔立ちと、それに似合わぬ鋭い目つき。それにあの運動神経。
同じ女として憧れてしまうほど、完璧な凛々しさと美しさをあわせ持つ人人だった。
「あ、あのっ、ありがとうございます」
「いや気にしなくていい。にしても災難でしたね」
「あはは・・・、そうですよねぇ・・・」
その人はふと私の通学カバンにかかったカードケースに目を止めた。中には学生証が入っている。
「・・・・南高の二年?」
「あ、はい」
「・・・・もしかしてだけど、瀬名 涼我って知ってるか?」
「!」
どうやらその人は瀬名くんと面識があるらしく、そんな風に聞いてきた。
「瀬名くんは私の友達です」
「・・・・・ふーん」
「お姉さんも瀬名くんと面識が?」
その人はなぜか一瞬苦虫をかみつぶしたみたいな顔をしたけど、ちょっとした知り合い、とだけ答えた。
「まあ瀬名 涼我と仲良くしてやってよ、九鬼 紅里さん」
「はあ・・・」
その人は意味深なことを言い残して、また来た時と同じように颯爽と去っていった。
「誰だったんだろ・・・・あのお姉さん・・・・」
ちなみにかき氷を買い忘れたのと大幅に遅れたのとでご立腹な凜をなだめるのには苦労した。
そして今年の夏祭りも波乱の末、無事終了した。
夏祭りから数日たったある日。
凜と瀬名くんとプールに行く約束が、目前に迫ったある日。
「あかりー、ちょっとみそと牛乳買ってきてくれないー?」
勉強をしていない姿を見られたせいか、お母さんがおつかいを頼んできた。
「えー・・・、日差し強いしやだよー・・・・」
「今料理始めちゃって手が離せないのよ。お駄賃あげるから」
「はぁい・・・・」
諦めて支度にとりかかる。
適当につかんだTシャツとジーンズ。それに、買い物袋代わりに放りだしてあった空っぽの通学かばんもつかむ。
そしていつもの腕カバーと日傘を装備して、めんどくささを抱えながら嫌々外に出た。
予想通り、恐ろしいほどの日差しがアスファルトを照り付けている。
私はとにかく早くスーパーに逃げ込もうと、急ぎ足で歩く。
(あっつ・・・・!!溶ける、溶ける・・・・!!!)
ただでさえ暑いのに全身完全防備。
一番近くのスーパーまでの距離が、果てしなく遠く感じる。
(ちょ、ちょっと一回影に逃げ―――――――)
そう思った瞬間ものすごい力でかばんをひったくられた。
「――――――っえ!?ひったくり!?」
はっとした瞬間には、もうひったくったやつは駆けだしていた。
「あ、ちょ、待って!!」
ひったくり犯が待ってと言われて待つわけないのに、そう呼びかけながら全速力で走って追う。
「ちょっともう!か、返してくださ・・・・っ!!・・・・うー・・・あっつい・・・!!!」
走りにくいけど日傘は捨てれない。
暑いけど腕カバーは捨てれない。
そんなどうにもならないジレンマを抱えつつどうにか見失わない距離をぎりぎりで保っている。
(私は体力ないからこのままじゃ逃がしちゃう・・・・!!誰か――――――!!)
心の中で叫んだ瞬間、まるで思いが通じたみたいに後ろから颯爽と誰かが私を追い抜いて行った。
その人はさらさらの黒髪をまっすぐになびかせながら、見る間にひったくり犯との距離を詰めていく。
そしてあっという間にひったくり犯に追いつくと、流れるような動作で華麗ひったくり犯を投げ飛ばした。
「ったく・・・・しょーもないことしやがって・・・」
その人は呆れたようにつぶやいてかばんを取り返すと、私のもとに歩み寄ってくる。
かわいらしい顔立ちと、それに似合わぬ鋭い目つき。それにあの運動神経。
同じ女として憧れてしまうほど、完璧な凛々しさと美しさをあわせ持つ人人だった。
「あ、あのっ、ありがとうございます」
「いや気にしなくていい。にしても災難でしたね」
「あはは・・・、そうですよねぇ・・・」
その人はふと私の通学カバンにかかったカードケースに目を止めた。中には学生証が入っている。
「・・・・南高の二年?」
「あ、はい」
「・・・・もしかしてだけど、瀬名 涼我って知ってるか?」
「!」
どうやらその人は瀬名くんと面識があるらしく、そんな風に聞いてきた。
「瀬名くんは私の友達です」
「・・・・・ふーん」
「お姉さんも瀬名くんと面識が?」
その人はなぜか一瞬苦虫をかみつぶしたみたいな顔をしたけど、ちょっとした知り合い、とだけ答えた。
「まあ瀬名 涼我と仲良くしてやってよ、九鬼 紅里さん」
「はあ・・・」
その人は意味深なことを言い残して、また来た時と同じように颯爽と去っていった。
「誰だったんだろ・・・・あのお姉さん・・・・」