[瀬名くんside]
あかりちゃんたちと別れたあと、俺はなんだか一緒に来た人たたちのとこに戻る気になれず、ぼんやりと屋台をめぐっていた。
道行く人はみんな幸せそうにおしゃべりして、手をつないで、笑いあって。
その姿を見ると心が冷えていくのを感じる。
そこで俺のポケットに入っていたスマホがふるえた。
見ると、一緒に来た集団のグループからの通知。
『瀬名くん今どこいるの??』
『私たちは広場の真ん中あたりの木の下に集まってるよ』
『場所わからない?』
『迎えに行くよ~』
『今どこにいる?』
グループのメンバーから次々に送られてくる心配の声。
けどやはり戻る気にはなれず、ただただ送られてくるメッセージを見つめる。
でもいつまでも無視するわけにはいかない。
どう返そうかと思案に暮れているところに、声がかかった。
「涼我」
振り返るとメンバーの一人、京極 力がいた。
俺の二つ上だけど、小学校からの友達なのできょーちゃんって呼んでいる。
俺にとっての、唯一の親友。
きょーちゃんは、京極 力なんていうバッキバキに強そうな名前をしておいて、実際は女に間違われるほどのかわいらしい顔立ちと高めで澄んだ声を持つ人。
ちなみにきょーちゃん本人は女に間違われるのを嫌がって男らしい立ち振る舞いや言葉遣いを意識しているみたいだけど、はたから見れば、男勝りで凛々しい女の子にしか思えない。
「みんな涼我のこと心配してたぞ」
「探しに来てくれたんだ、きょーちゃん」
「当たり前だ。心配したんだからな」
「ん、ごめん」
「・・・・・?」
きょーちゃんが俺の浮かない表情に気づいたのか、言葉を止めた。
「どうした?何かあったか?」
「いや・・・・、みんなのとこ戻りたくないんだけど帰ってもいーかな?」
「・・・・なんだ急に」
「んー?なんとなく」
そう答えた俺の目は、目の前を歩く幸せそうな親子に注がれている。
それをしばらく黙ってみていたきょーちゃんだったが、はあ、とわざとらしいため息をついた。
「お前な・・・・、感傷にひたってたってしょうがないだろ。そういうときこそ友達と過ごした方がいいんじゃないのか?」
「過ごそうとしたよ。断られちゃったけど」
「は?何の話だ、みんな断るどころか涼我のこと探してるくらいだぞ?」
「いやきょーちゃんたちの話じゃなくて。あかりちゃんの話」
「誰だよそれ」
きょーちゃんは学年が違うので当然だけどあかりちゃんを知らない。
いや逆に知らないから話したんだ。
知ってるやつにはこんな話できない。
「いっしょに花火見よって誘ったけど、だめだった」
「誰だか知らないがどうしてもそいつがいいのか?」
「どうだろ・・・・、うーん、自分でもよくわかんないけど、俺を必要としてくれる人ならだれでもいいのかもしんない。その点あかりちゃんは確実に俺を必要としてくれてるからさ」
「・・・・別に一緒に来たみんなだってお前のこと必要としてるだろ。じゃなきゃ心配しない」
「口だけなら誰だって言えるじゃん。実際探しに出たのきょーちゃんだけでしょ?」
「・・・・・」
きょーちゃんが言葉に詰まったってことは図星だろう。
心配してるけど探しはしない。
どうせその程度の関係だ。
きょーちゃんは俺をじろりとにらんでまた口を開く。
「・・・お前がそうやって線引くからみんなお前に深入りできないんだろ。必要としてほしいなら態度で示せよ」
「・・・・・」
今度は俺が黙ってしまった。
きょーちゃんの言ってることは、俺もわかってることだったから。
信頼してもらうには、心を開いてもらうには、自分から信頼して、心を開かなくてはいけない。
だけど、信頼してもらえる保障なんかないのに信頼なんてできない。
人を信頼するって、気が遠くなるほど勇気がいることだから。
「まあ涼我がどうしようと涼我の勝手だけどな。ただ少なくとも俺はお前のこと必要としてるぞ」
「・・・・うん」
「だから別にそのあかりちゃん?ってやつじゃなくても、俺でもいいだろ」
「・・・・まあそれもそうだね」
「じゃあ戻ろう」
「えー・・・、きょーちゃんと二人で見たいなぁ」
俺は絶対さらっと却下されると思ったけど、きょーちゃんは意外にもそうしなかった。
「・・・しょうがないから今年だけな」
「え、いいの?絶対やだって言うと思った」
「そりゃ俺だって何が楽しくて男二人で花火見なきゃいけないのかわからないけど、まあ涼我が落ち込んでるときくらいはな」
「落ち込んでるって言わないでよ、なんかださいじゃん」
「実際そうだろ。じゃあなんだ?センチメンタル?感傷的?哀愁を感じてる?」
「うっさいなー、もー」
俺は結局きょーちゃんの小言を聞きながら花火を見ることになった。
うるさいしめんどくさいけど、なんだかんだ俺がいてほしいときにいてくれる。
だからきょーちゃんの側は、安心する。
あかりちゃんたちと別れたあと、俺はなんだか一緒に来た人たたちのとこに戻る気になれず、ぼんやりと屋台をめぐっていた。
道行く人はみんな幸せそうにおしゃべりして、手をつないで、笑いあって。
その姿を見ると心が冷えていくのを感じる。
そこで俺のポケットに入っていたスマホがふるえた。
見ると、一緒に来た集団のグループからの通知。
『瀬名くん今どこいるの??』
『私たちは広場の真ん中あたりの木の下に集まってるよ』
『場所わからない?』
『迎えに行くよ~』
『今どこにいる?』
グループのメンバーから次々に送られてくる心配の声。
けどやはり戻る気にはなれず、ただただ送られてくるメッセージを見つめる。
でもいつまでも無視するわけにはいかない。
どう返そうかと思案に暮れているところに、声がかかった。
「涼我」
振り返るとメンバーの一人、京極 力がいた。
俺の二つ上だけど、小学校からの友達なのできょーちゃんって呼んでいる。
俺にとっての、唯一の親友。
きょーちゃんは、京極 力なんていうバッキバキに強そうな名前をしておいて、実際は女に間違われるほどのかわいらしい顔立ちと高めで澄んだ声を持つ人。
ちなみにきょーちゃん本人は女に間違われるのを嫌がって男らしい立ち振る舞いや言葉遣いを意識しているみたいだけど、はたから見れば、男勝りで凛々しい女の子にしか思えない。
「みんな涼我のこと心配してたぞ」
「探しに来てくれたんだ、きょーちゃん」
「当たり前だ。心配したんだからな」
「ん、ごめん」
「・・・・・?」
きょーちゃんが俺の浮かない表情に気づいたのか、言葉を止めた。
「どうした?何かあったか?」
「いや・・・・、みんなのとこ戻りたくないんだけど帰ってもいーかな?」
「・・・・なんだ急に」
「んー?なんとなく」
そう答えた俺の目は、目の前を歩く幸せそうな親子に注がれている。
それをしばらく黙ってみていたきょーちゃんだったが、はあ、とわざとらしいため息をついた。
「お前な・・・・、感傷にひたってたってしょうがないだろ。そういうときこそ友達と過ごした方がいいんじゃないのか?」
「過ごそうとしたよ。断られちゃったけど」
「は?何の話だ、みんな断るどころか涼我のこと探してるくらいだぞ?」
「いやきょーちゃんたちの話じゃなくて。あかりちゃんの話」
「誰だよそれ」
きょーちゃんは学年が違うので当然だけどあかりちゃんを知らない。
いや逆に知らないから話したんだ。
知ってるやつにはこんな話できない。
「いっしょに花火見よって誘ったけど、だめだった」
「誰だか知らないがどうしてもそいつがいいのか?」
「どうだろ・・・・、うーん、自分でもよくわかんないけど、俺を必要としてくれる人ならだれでもいいのかもしんない。その点あかりちゃんは確実に俺を必要としてくれてるからさ」
「・・・・別に一緒に来たみんなだってお前のこと必要としてるだろ。じゃなきゃ心配しない」
「口だけなら誰だって言えるじゃん。実際探しに出たのきょーちゃんだけでしょ?」
「・・・・・」
きょーちゃんが言葉に詰まったってことは図星だろう。
心配してるけど探しはしない。
どうせその程度の関係だ。
きょーちゃんは俺をじろりとにらんでまた口を開く。
「・・・お前がそうやって線引くからみんなお前に深入りできないんだろ。必要としてほしいなら態度で示せよ」
「・・・・・」
今度は俺が黙ってしまった。
きょーちゃんの言ってることは、俺もわかってることだったから。
信頼してもらうには、心を開いてもらうには、自分から信頼して、心を開かなくてはいけない。
だけど、信頼してもらえる保障なんかないのに信頼なんてできない。
人を信頼するって、気が遠くなるほど勇気がいることだから。
「まあ涼我がどうしようと涼我の勝手だけどな。ただ少なくとも俺はお前のこと必要としてるぞ」
「・・・・うん」
「だから別にそのあかりちゃん?ってやつじゃなくても、俺でもいいだろ」
「・・・・まあそれもそうだね」
「じゃあ戻ろう」
「えー・・・、きょーちゃんと二人で見たいなぁ」
俺は絶対さらっと却下されると思ったけど、きょーちゃんは意外にもそうしなかった。
「・・・しょうがないから今年だけな」
「え、いいの?絶対やだって言うと思った」
「そりゃ俺だって何が楽しくて男二人で花火見なきゃいけないのかわからないけど、まあ涼我が落ち込んでるときくらいはな」
「落ち込んでるって言わないでよ、なんかださいじゃん」
「実際そうだろ。じゃあなんだ?センチメンタル?感傷的?哀愁を感じてる?」
「うっさいなー、もー」
俺は結局きょーちゃんの小言を聞きながら花火を見ることになった。
うるさいしめんどくさいけど、なんだかんだ俺がいてほしいときにいてくれる。
だからきょーちゃんの側は、安心する。