終業式が終わって、もう帰ろうかというときにメッセージが来た。

 瀬名くんから。
 『今からちょっと話そ』って。
 特に予定がなかったので了承すると、空き教室の場所が送られてきた。


 午後から部活だという凜と別れ、その空き教室に向かった。


「お、来たか、あかりちゃん」


 教室の中にいた瀬名くんは私をみつけてひらひらっと手を振ってきた。

 月曜日の朝は、毎回私が彼を待っているから、なんだか不思議な感覚。


「なんか俺があかりちゃん待ってるの慣れてなくて不思議な感じする」

「私もちょうどそれ思ってた」

「ほんと?奇跡」


 私は瀬名くんが座る席の隣に腰かける。


「あ、ていうか朝の。わざと話しかけるのやめてよね」

「あはは、ごめんごめん。なんかあかりちゃんってからかいたくなるんだよね」

「他は何してもいいけど人前でからかうのはだめ」

「わかったよ、ごめんね?」


 瀬名くんにまっすぐに見つめられながら謝られると追求する気がなくなってしまう。
 私はため息をついて話題を変えた。


「それで、なんで呼んだの?」

「あ、そうそう、明日から夏休みじゃん」

「うん」

「吸血どうする?月曜日にどっか集まってやる?」


 どうやら夏休み中吸血できない私を心配して呼び出してくれたらしい。


「ううん、夏休み中は我慢する」

「え、大丈夫?」

「うん、瀬名くんと会う前は血なんてそうそう飲んでなかったからさ、一か月くらいなら大丈夫だよ。夏休み後半は予定入れてないからほぼ人と会わないし。それに瀬名くんは予定いっぱいだろうから無理しなくていいよ」

「俺のことなんて気にしなくていいのに」


 瀬名くんはやはりまだ心配なのか、納得していなさそう。


「俺があかりちゃんに会いたいからって理由じゃだめ?」


 瀬名くんが私に会いたいから・・・・か。
 もちろんそれが本当なら全然会うけど、瀬名くんは優しいからそう言って自分のためを装っているようにも思える。


「会いたいなら普通に遊ぼう。私のためだけに集まるのは申し訳ないから」

「・・・・うん」


 瀬名くんはまだ少し納得しきれてなさそうな声だったけど、了承してくれた。


「じゃあ・・・せめてプール行くときにさ、もし二人っきりになれたら吸血する。これならいいでしょ?」

「・・・・うーん、まあ・・・・」

「約束。また連絡するから、お互い行きたいとこ考えとこ」


 そう言って、優しくほほえむ瀬名くん。

 瀬名くんは優しすぎるんだよ。
 そう、心の中でつぶやいた。