「…ねぇ百合、覚えてる? 私が前に言いかけて、途中でやめたやつ」
「え、なに? 気になるんだけどって言ったやつ?」
「そう、それ」
ういはは、ふふって少し照れたように笑った。
「ほんとはね…百合に会って、もう一回だけ『夢』を持とうって思ったの」
「夢?」
「うん。病気が見つかったときにね、
人生もう終わりだって思って、
それまで好きだったことも、
やりたいことも、全部捨てちゃった」
ういはの声が少しだけ震える。
「でも、百合に打ち明けて、泣いて、笑って、
そしたらまた心の奥から“まだ終わりたくない”って思えたの」
「……」
「だから私、元気になったらやりたいことがあるんだ。ちゃんと生きて、伝えたいことがあるの」
「ういは…」
「それともうひとつ。あのとき私が“演じてた”って言ったでしょ?」
「うん」
「でも、百合の前では、素でいたいなって。
もう怖がるのやめる」
「自分のこと嫌われるの、怖いって思ってたけど、
百合だけは違うんだなって思ったから」
「…あ、ちょ、泣いてるじゃん」
「泣いてないし!!」
二人して笑った。
いつもの病室が、まるでどこかの教室みたいにあったかかった。


