「あ、柚里葉ちゃんだー! こっちこっちぃ~」

 立ちすくむ私に気づいたミコトちゃんが、自動ドア越しでも聞こえる声で私を呼ぶ。

「――おい、うるさいっ!」
「っ、ムググ!?」

 だけど蒼くんは慌てたようにミコトちゃんの口を手でふさいだ。

 私が知らなかっただけで、本当は二人はかなり親しいのかもしれない。

(ミコトちゃん、目元しか見えないけどかなりかわいいし……。蒼くんと並ぶとすごくお似合い)

 そこでようやく私は気づいた。

(もしかして、蒼くんとミコトちゃんは付き合ってる……?)

 そう考えれば全部つじつまが合う。

(そっか。蒼くんの機嫌が良かったのも、ミコトちゃんとは仲が良いのも、二人は恋人同士だからなんだ……)

 気づいてしまえば、私の心は急に冷えていった。

 だけどそれがどうしてかを知るには、私にはまだ時間が必要だったみたい……。