矢吹(やぶき)実胡都(みこと)――それがその子のフルネームだった。

「『ちゃん』とかいらないから、ミコトって呼んで。私は柚里葉ちゃんって呼ぶから」
「あぅ……え、えと」

(あんまり知らない人を呼び捨てなんて無理ぃー!)

 ぐいぐい来るミコトちゃんに私はタジタジになってしまう。

 そんな時にあらわれた救世主は蒼くん。

「はい、終了。ミコトは早く先生んとこ行けよ、時間だろ」
「えーつまんないのぉ。しょうがないなぁ、じゃねー柚里葉ちゃん」

 蒼くんに言われて、ミコトちゃんは髪の毛の先をヒラヒラさせながら授業ブースに入って行った。