「真智さん、じゃあ行ってきます」
「行ってくるよ」
「柚里葉さんも蒼も、行ってらっしゃい」

 車のドアを閉め、私と蒼くんは一緒に塾に向かった。

(怖くて塾に行けなくなるかと思ったけど、意外と大丈夫だったな)

 蒼くんのファンだという女の子たちに、階段から突き落とされそうになってしまった事件。

 私はそのせいで不安になって、塾も行けなくなるんじゃ……と自分で思っていた。

 けど……。

(普通に行けたし、なんなら蒼くんや真智さん、小野寺先生ともっと仲良くなれた気がする)

 頼っていいのか心配だったけど、みんな優しく私を受け入れてくれた。

(それに、なにより――)

 私は隣にいる蒼くんをこっそり見た。

(あれ以来、前みたいに普通の蒼くんに戻ったし、安心してるのかもしれない)

 不機嫌が続いていた蒼くんは、最近機嫌が良いみたい。色んな話が出来て楽しい!