女の子は私を力いっぱい突き飛ばした。

 私のすぐ後ろは階段。よろけた私は、階段を踏み外した。

「あっ……」

 ――落ちる!
 ふわっと体が浮く感覚に、私の頭をよぎったのは、先生でもパパでも真智さんでもなかった。
 
(蒼くん……っ、!)

 私が心の中で叫んだ瞬間、ここにいるはずがない人物が私の名前を叫んだ。

「柚里葉っ!」