でも真智さんは納得しなかった。

「何もなかったらそんなに落ち込んだりしないわよ。どうしたの?」
「本当に何でもないですって……」
 
 パパなら、私が「何でもない」って言うとすぐに聞くのを止めてくれた。

(答えたくないのに、どうしてそんなに聞きたがるの……?)

 私はいらだちを覚えながら、車に乗り込もうとした。
 けどーー

「柚里葉さん、もし嫌なことがあったら教えて。前みたいに何もわからないままだと、私も心配しているだけで何もしてあげられないから」

 そう言われても、私だって話せることと、話せないことだってある。

「何もないって、何度も言ってるじゃないですか……」

 もうこれ以上触れないで欲しかった。
 じゃないと、私の気持ちが破裂しそうで……。

「本当に何もなかったの? 何かあれば私が代わりに――」
「ないって言ってるじゃないですか!」

 思わず声が大きくなってしまった。