真智さんは私の表情がいつもと違うことに気づいたらしい。

(スニーカーのこと言う? でも……)

 私は一瞬迷った。
 でも真智さんに、「靴を隠されてしまったかもしれない」なんて言ったら、真智さんにも、小野寺先生にも、それに蒼くんにも迷惑がかかってしまう。

(何もなかったふりをしておこう)

 私は真智さんに顔が見えないように、いつもより深く俯いた。

「何にもなかったです……」

 そういえば、きっとそれ以上聞かないでいてくれると思ったから。