「あれ?」
「どうしました、三隅さん」

 ある日の塾帰り、玄関で私は立ち止まっていた。

「あの、靴が見つからなくて……」

 私は不思議そうな顔をしている小野寺先生に告げた。
 塾に来て、下駄箱に入れたはずのスニーカーが、置いたはずの場所に無かったのだ。

「どこにおいたの?」 
「ここに置いたはずなんですけど……」

 私は置いたはずの場所を指差した。
 何足も並んだ靴の中にポカンと空いた空間は、明らかに違和感がある。

「あれ、どうしたんだろ。何色?」
「黒です」

 小野寺先生もきょろきょろ。
 高い身長を生かして下駄箱の上も探してくれた。