蒼くんが通う塾はビルの二階にあった。
 階段もあるみたいだけど、エレベーターがちょうど一階についていたので、二人でそれに乗り込む。

 私の緊張はMAXだ。

「あ、蒼くん。本当に大丈夫?」

 消えそうな声で尋ねる私に、蒼くんはにっこり微笑みを返してくれた。

「たぶん知らないことがいっぱいだからだよ。少しずつ知れば、怖いのも無くなると思うよ」
「そ、そうかなぁ」
「そうだよ。だから安心して」

 蒼くんにそう言われると少しだけ勇気が湧いてくる。

「うん……頑張ってみる」

 そんな話をしていたら、エレベーターがチンと音を立てて止まった。

「さ、着いたよ。行こう」
「……うん」