次の休みが来た。
 今日は蒼くんに誘われた塾の体験授業一日目。なるべく人に会いたくないからと、夜の時間帯に設定してもらった。
 
「ペンケースよし、ノートよし。あとは――」
「大丈夫だよ、柚里葉ちゃん」

 車の後部座席で靴下の穴を確認しようとした私を止めたのは、隣の席で楽しそうに笑う蒼くんだ。
 運転席から真智さんも笑いかけてくれた。

「まずはちょっと行って、柚里葉さんがお試し期間中にどんなことをしたいか聞かれるだけよ」
「そうだよ。わかんないとこあったら、俺に聞いてくれればいいから」

 二人は私を安心させようと、たくさん励ましてくれる。

(とはいっても、いくらお試しってでも緊張しちゃうんだよぉ……)

 私は顔を見られないように入念に髪で隠し、伊達メガネにマスクまで装着して家を出ていた。

 そもそもパパ以外と出かけるなんて、覚えている中で初めてかもしれない。
 学校にも行ってなくて、友だちなんかいない私が家族以外と出かけるなんて、少し前だったら考えられなかったから。