(――えっ?!)
私は弾かれたように振り向いた。そこには目を丸くした制服姿の蒼くんがいたのだ。モスグリーンのブレザーに、襟元を少し緩めてネクタイを結んだ蒼くんはそのまま雑誌に載っていそうだ。
(蒼くん、学校に通い始めたんだ。そういえば、全然話してなかったから知らなかった)
そんなことより、今この状況……。めちゃくちゃマズい状況なのでは……。だって私、顔を隠していないんだもん。
「ど、どうして――」
「今日、午前3時間で終わる日だったんだよ。柚里葉ちゃん知らなかったよね」
たしかに学校の予定は何も知らない。もしちゃんとチェックしておけば、こんな失敗しなかったはずなのに。
私は後悔に手をグッと握りしめると、この場を誤魔化すように笑ってみせた。
「あ、はは。そっか、知らなかったよ。じゃ、じゃあ私部屋に――」
「HALちゃんだよね? あの、配信者の?」
ドクン……っ!
蒼くんの口から聞こえたのは〝HAL〟の名前。
(バ、バレた――)
私の心臓は破裂するんじゃないかというくらい激しく鳴っていた。足が震えそうになるのを必死でこらえる。
蒼くんは相変わらずにこにこしながら私の前に立っている。きっと私の顔は引きつっていることだろう。
(ど、どうしよう。何て言えばいいの……)