時計は昼の12時になろうとしている。
私は二階の部屋から素顔のままリビングに降りていった。今日は平日だから当たり前だけど誰もいない。
「はぁ、落ち着く……」
私はソファーにドサッと腰を下ろした。同居が始まってから、なんとなくリビングに降りるのを避けていた。
(楽しい家族の時間を気まずくさせたくないもんね……前みたいに)
私はレストランでの出来事を思い出した。
(真智さん、すごく驚いてた。きっと真智さんを困らせちゃったよね……。どうして不登校だなんて正直に話しちゃったんだろう)
世の中の人は学校に行くのが良いことだって思ってる。パパだって怒りはしないけど、きっと困った子だって思ってるはず。
(多分、蒼くんも同じように思っているよね。不登校の子が家族になるなんて、困ったなぁって……)
蒼くんとまともに顔を合わせたのも、あの顔合わせの日から1、2回ほどしかない。蒼くんもモデルの仕事をしているせいで忙しいのか、真智さんやパパと一緒に夜遅くに帰ってくることもある。
「困った子だって思われるのはちょっと悲しいけど、仕方ないよね」
――ぐぅぅぅっ……
しんみりしてたらいきなりお腹がなった。実は朝ごはんがまだだった。
みんなで毎朝同じ時間にごはんを食べるって、私にはかなりハードルが高い。食欲がないとかなんとか理由をつけて、みんなが出かけてから食べることにしていた。
「何か残ってるかなー」
私はペタペタと冷蔵庫に向かうと、中を物色し始めた。ヒンヤリした庫内に顔をつっこみ、あれこれ探していた、その時だ――。
「……柚里葉ちゃん?」
聞こえるはずのない声が私の耳に飛び込んできた。