「……あのね、蒼くん」

 しばらくして、私は蒼くんの名前を呼んだ。

 心の中に浮かんだ言葉をそのまま口にする。

 今だけは、それが許されるような気がしたから。

「パパと真智さんには悪いけど、ちょっと喜んでる私がいるの」

「喜んでる?」

 私の言葉に蒼くんは不思議そうな声で聞き返した。

(さっき『もう家族になれない』ってわかった時に感じた気持ち……)

 その時はそれがどういう気持ちなのかわからなかったけど、今、私の心の中ではっきり答えがでていた。

「これでちゃんと蒼くんを、好きになれるって思ったの……」

「――っ!」

 私の言葉に蒼くんが息を飲む音が聞こえた。