「柚里葉ちゃん足早すぎるよ。あっという間に見えなくなっちゃうんだもん」

 そう言ってにっこり笑う蒼くんは、いつもの蒼くんだった。

 返事が出来ないでいると、私の隣に座った蒼くんは大きく伸びをした。

「うーん! 結局ダメだったかぁ……」

 明るい声で蒼くんは言った。

「家族になるって難しいんだなぁ。母さんはこれで二度目の失敗だし」

 そう言って蒼くんは「あはは」と笑って見せたけど、私はじっと黙ったままだった。

 私が何も言わないから、蒼くんもそれ以上何も言わずに静かな公園に戻った。

 でも蒼くんも私もそのまま立とうとしなかった。

 立ち上がって、歩き出したところで今の私たちが行く場所はどこにもなかったから。