私立青百合学園は、
都会につくられた自然あふれる進学校だ。
…と、いうのはあくまで私の主観だが、
まあ間違ってはないと思う。
母親の実家から電車に揺られて
2時間ちょっと。7時半に辿り着くために
4時半に起きたのだから、毎日こんな
生活したくない、とは思うが、
私がここを選んだ理由は、ずばり、
寮があるからだ。
きらきらり〜ん。
…セルフ効果音には疲れたので、
次からは省いていく。
青百合学園には寮があり、
全校生徒の30%がそこで
生活しているらしい。
そこには本やカードゲームなどの
暇つぶしに使うものはもちろん、
ゲームやスマホも寮で使うだけなら
持ち込んでもいいらしく、
家が近くても寮に入ることを
志願した人もいる。
まあそれは許可されなかったらしいが。
あくまで噂である。ただの噂ですので
本当かどうかはあしからず。
はい。
とにかくそんな素晴らしい高校で、
もちろん偏差値も高いが、正直面倒くさい
勉強をやり続けたこともあり、
余裕で合格を果たした。
『橋本莉菜』の頃の記憶がある人がいる
我が家では窮屈でしかないので、
寮というのはまさに天から降りてきた
蜘蛛の糸。
青百合学園は名門校なので学歴があるだけで
就職活動にも便利だろうということで、
母親も呆気なく許可してくれた。
私立校なのでお金もかかるが、
それは未だに送られてくる
元!父の養育費により何も問題ない。
そもそも青百合学園に入りたいと言うのは
橋本莉菜の頃から言ってきたのであり、
成瀬莉菜となった今でもその夢は
朽ち果てていない。珍しいけどね。
想いが続いてるって言うのは。
そんなことはともかく、
念願の青百合学園に入学した私は、
これから青春というものを謳歌することに
なるのだが…。
「ねえ、あの子地味じゃない?」
「確かに…」
「なんでここにいるんだろ…」
…悪目立ちしてる!
まあそうだ。
青百合学園というのは陽キャの
陽キャのための陽キャによる学校だ。
私みたいなTHE、地味子がいることが
おかしいらしい。
話しかけてこないのは気楽ではあるけど。
それでも、こそこそと悪口を
言われるのはちょっと堪える…!
早く体育館行こ…。
体育館に行けば人に埋もれて
誰かの視界に入ることも
少なくなるでしょう…。
私はそう願って、いそいそと
体育館に向かった。