わたしは昴のファンじゃない!

 わたしが南くんのファンになったのは、中1のときに見たドラマがきっかけだった。

 それからわたしが毎日のように『南くん、南くん』と騒いでいたせいで、昴のことまで洗脳してしまったのか、ある日突然「俺、柳瀬南のいる芸能事務所に受かったから」なんて報告を受けたときには、顎が外れるんじゃないかってくらい驚いたよ。


「そんなことばっか言って。いつか後悔することになっても知らないからね?」

「えー? 後悔することなんて、なんにもないしー」

 そう言いながらもう一度運動場の南くんを観賞しようとしたら、にゅっと目の前に顔が現れた。

「なあ、そろそろ俺のファンになってくれた?」

「げ、昴。だから! 昴のファンにはなれないって言ってるでしょ」

 両手で昴の頭をどかそうとしても、頑として動かない。

「ああもうっ。わたしの至福のひとときの邪魔しないでってば」