そんなこと頼んでない。

 そんなこと……ムリだってわかってて言わないで!


 だけど、わたしは言い返すことも、立ち止まることもせず、その場をあとにした。


 心配して来てくれたってことくらい、わかってるよ?

 だけどね。そんなのに甘えちゃったらわたし、この学校の藤沢昴ファンの女子全員を敵に回すことになっちゃうんだよ?

 そのくらい、わかってよ。


 ……わたしは、昴が好きなだけなのに。

 ただの悪ガキだったあの頃みたいに、屈託なく笑う昴の笑顔が好きなだけなのに。

 それを口にすることは許されない。


 わたしも、ただの藤沢昴ファンならよかった。

 だけど、わたしは昴のファンにはなれないよ……。


 溢れ出しそうな想いの代わりに、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。